11

12月22日

もう年の瀬になってしまった。今年もいろんなことがあったけれど、一番大きなことは裁判員制度がいよいよ動きだしたということかもしれない。6月に「私は裁きません」というエッセイを書いたが、その後も見解は変わらず、11月には東京での反対集会に「ビデオレター」で出演してしまった。来年1月には「文藝春秋」にインタビュー記事が載る。やはり、この制度は、もう一度考え直したほうがいいと思う。ここまで進んできた取り決めを撤回してもらうことは、かなり現実的な困難を伴うことだろう。しかし、どんなに難儀しても、やはり始めてはいけない。詳しい見解は、どうぞ「文藝春秋」でお読みください。なお反対運動にご興味のある方は、こちらをご覧になってみてください。
《裁判員制度はいらない! 大運動 http://no-saiban-in.org/


12月3日

あんまり雪月花の更新がないので、ご心配のメイルを戴いてしまった。大丈夫、元気でおりますのでご安心ください。じつは11月末に講演でハワイに出かけたため、そのまえの執筆が立て込んでしまった。「文学界」の短編連作の4作目を仕上げ、そして連載エッセイを幾つか書いているうちにお葬式も続けて出来、あれよあれよという間に出かける段になってしまったのである。庭の百日紅の枝下ろしも11月中に終えたかったのが終わっていない。それにしても、百日紅の枝下ろしとハワイの樹木の違いは呆れるほどである。今回の渡航は、天台宗のハワイでの開教35周年記念講演のためだったのだが、ハワイという異境で仏教を説き続けた荒良寛師のご苦労が偲ばれた。それはまるで、百日紅をハワイで育てるようなものではないか。むろん、そこでは剪定も不要になる代わり、サルが滑るような木肌にはならない。そんな百日紅を以前静岡県で見たことがあるのだが、それはそれで美しかった。檀家制度も成り立たないフロンティアでの仏教は、じつに実相無相を感じさせたのである。


11

11月9日

『禅語遊心』(ちくま文庫)と『禅のいろは』(PHP)が、相次いで出た。自分で云うのも妙だが、どちらも今後座右に置き、繰り返し眺める本になるのだろうと思う。『禅語遊心』の解説は、作家の江上剛さんにお願いした。眼を覆いたくなるような書きだしだが、最終的にはありがたいお言葉を頂戴した。『禅のいろは』のほうは、連載時に挿画を描いてくださった川口澄子さんが単行本化のために幾つも描き加えてくださり、それにつられて私も章扉の言葉などを描き加えた。それにしても川口画伯の絵の面白さは無類である。凄いひっつかみ、とでも云うのだろうか。私にすれば時折言いがかりじゃないかという場面にも出くわすのだが、おちゃめな宗久クンと達磨クンのコンビはどうにも憎めない。ここまで描かれてしまえば、私も怖いものなどないような気になるのである。


10

10月31日

先日、檀家さんの娘さん夫婦がお寺にやってきた。大きなお腹で、11月には子供が生まれるらしいのだが、名づけで迷って相談に来たというのだった。かと思うとその翌日には、やはりお腹の大きい別な新婚の二人が来て、自分たちの部屋の電灯が夜になると勝手に点いたり消えたりするから、なんとかしてほしいと云うのだった。私はぼんやり無門慧開禅師の言葉を憶いだしていた。「春に百花あり夏に涼風あり、秋に月あり冬に雪あり。もし閑事の心頭に掛かる無くんば、即ち是れ人間の好時節」。二組の若い夫婦に、里の紅葉はどれほど違って見えていることだろう。かく云う私も、短編を終えてようやく銀杏の黄葉に眼がいった。


10月11日

10月にはいり、『無功徳』(海竜社)と『息の発見』(平凡社)とが相次いで刊行された。内容については読んでいただくしかないが、対照的な表紙が面白いと、自分でも感じている。片や仏旗の五色のなかの黄色を使い、片や五木寛之さんの選択で伊藤若冲の、これまで未使用のしぶい蓮池図になった。面白いというのは、これだけイメージの違うデザインでありながら、両方とも明らかに仏教的だということである。
仏教には、じつに派手な面と幽玄な表情が、双つながら同居しているのである。そういえば禅もそうだ。鮮やかで、しかも枯淡。活発で、しかも寂静。そんなことがあり得るのが、おそらく自然というものなのだろう。


9

9月30日

先日、岐阜市に対談と講演で出かけた。さほど天気がよくはなかったが、長良川の川辺を一面に赤く染める彼岸花が、くらくらするほど綺麗だった。これほどまとまった数の彼岸花を見たのは、初めてかもしれない。古田肇岐阜県知事との対談も面白かった。これほど禁忌がなく、率直に語ってくれる政治家にお会いしたのも初めてのような気がする。そして初めて尽くしの最大の体験は、なんといっても鵜飼いである。
夕方6時くらいから屋形舟に乗り、楽しい飲食を終えてそのときを待つのだが、今憶いだしてもそれは夢幻のような時間である。6人の鵜匠がそれぞれ12羽ずつの鵜を操り、6艘の舟が松明を掲げて川面を遡ってくる。聞こえるのは、その松明の爆ぜる音とときおり舷を叩く櫂の音、そして風と水がなぜか遙か昔の時間から吹いてくるようだった。今年の鵜飼いはまもなく終わるが、是非一度行かれることをお勧めしたい。


9月17日

秋茜が飛び始め、今年も彼岸花が咲きはじめた。お盆と秋彼岸が、今年ほど近く感じられた年はなかった。きっと住職になりたてだからなのだろう。時が急ぎ足で過ぎるが、今度「清流」という雑誌で、「いのちの養生法」という連載を始めた。またまもなく月刊「ちくま」では、荘子にまつわる連載「むふふの人」も始める。一難去ってまた一難。もしかすると、人生はお盆と秋彼岸のあいだのようなものなのだろうか。今晩は立待ちの月が綺麗だが、つい「忽ち」だと錯覚してしまう。電車の移動時間と坐禅の時間がひときわ嬉しい。


8

8月30日

久しぶりに小説集『テルちゃん』が刊行になった。いや、思えば連作の小説集は初めての出版なのだった。なんだかとても嬉しい。収録された3作は、なんと2004年から2008年にかけて、つまり4年にまたがって書いたものだ。
その間にはテルちゃんと同じような日本在住のフィリピン人も増えてきている。介護や看護の分野での日本進出も今後は進みそうだ。テルちゃんもそうだが、彼らにはカトリックの教えが染み込んでいることが多く、懐かしいような気分を感じることが多い。今回の作品中のタガログ語についても、檀家さんに嫁いでいるフィリピン生まれの女性何人かに助言をいただいた。またフィリピン女性と結婚され、ネット上でさまざまな相談に応じていらっしゃる飯島さんにも随分お助けいただいた。謹んで感謝申し上げたい。


8月12日

いよいよお盆だというのに、このお盆をまたぐようにして、「カエル・プラネット」という催しが新宿の京王プラザ・ホテルで開催される。カエルとは、むろんビッキなどとも呼ばれるあの両生類である。だいたい、今年は「国際カエル年」だというのだが、私は知らなかった。今や絶滅の危機に瀕しているカエルほか両生類が多く、それゆえ定められたらしい。しかし私はべつに、だからといって「カエル・プラネット」を紹介するわけではない。じつはこの催しには、カエルに取り憑かれた4人の作家たちの作品が展示されているわけだが、その一人がなんと、うちのお寺のお隣さんなのである。渡辺弥七さんとおっしゃるその御仁は、毎日カエルの体を借りて100個以上の文字を書いている。母上が入院され、早く家に「カエル」ことを願って初めて書かれて以来、なんと89万匹以上のカエルを描いてきた。こうなると、まさに行である。ほとんど宗教的と云える。このカエルを是非皆さんにもご覧いただきたいと思うのである。会場には、たぶん「カエルタイムズ」なる新聞もあるかと思うが、これもなかなか読み応えのある新聞である。お盆のお墓参りでも済んだら、東京近辺の方は是非お出かけになってみていただきたい。8月13日には小泉八雲の曾孫である小泉凡氏による講演「八雲とカエル」もある。私は棚経に廻っているけれど、皆さんはどうぞどうぞ涼しいところで楽しい時をお過ごしください。いえ、べつに僻んじゃいません。


国際カエル年企画フェスタ「カエルプラネットへようこそ」
会期: 平成20年、8月11日(月)〜19日(火)10:00am〜7:00pm(最終日〜4:00pm)
会場: 新宿・京王プラザホテル ロビーギャラリー、アートロビー
内容: 4人の作家によるカエルアートの展示。特別企画としてカエルトークや国際カエル年に関するパネルなどを展示する。


■渡辺弥七(蛙文字)福島・三春出身。

福島県職員を経て創作活動に入る。桜の名所で知られる三春町滝桜のそばの工房は「蛙さんの家」として親しまれている
■松原伸一郎(写真家、陶芸家)名古屋出身。

日本写真専門学院卒。趣味で陶芸を始める。屋号は「ふるいけや」。
その数600匹以上。それを写真に撮り続け現在に至る。
■フジモト芽子(創作家)大阪府生まれ。

甲南女子大学文学部卒。雑貨屋・小物デザインの仕事を経て現在に至
る。個展・グループ展など多数開催。
■細見博子(オブジェ作家)岡山出身。

彫金を習いはじめ創作活動へ。アクセサリーブランドBamboo Magic設立。個展活動をはじめる。


□特別企画:トーク「八雲とカエル」小泉 凡(島根女子大学 准教授)

日時:8月13日(水) 2:00pm〜 京王プラザホテル45F リトルベア
    参加費:3000円(税込み)コーヒーとお菓子つき。
    お問合せ・お申し込み/ロビーギャラリー Tel:03-5322-8061
■カエルトーク

会場:ロビーギャラリー地階
水族館関係者によるカエルトーク。絶滅が危惧されるカエルの
現状を含めた生物としてのカエルのお話。参加費:無料

<「カエルプラネット」に関するお問い合せ先>
「100年カエル館」東京事務所(ケーアンドケー内)担当 高山ビッキ
Tel: 03-3981-6985 Fax: 03-3981-6984 E-mail: vikki あっとまーくroom.ocn.ne.jp
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