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エッセイ


日曜論壇 第60回 翁忌(おきなき)に思う

(2014/10/19 福島民報掲載)

 「翁忌」というのをご存じだろうか。旧暦の十月十二日のことで、松尾芭蕉の命日である。現在の暦ではすでに過ぎたけれど、旧暦で言うならこれからだ。  「翁」と呼ばれる人は、この国では神に近い存在として尊ばれている。現代人とい […]

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「最後の希望」としての幽霊たち

(2014/10/17 大法輪 11月号掲載)

 東日本大震災以後、東北の被災地では「幽霊」の目撃譚が非常に多く聞かれる。二〇一三年七月には京都大学「こころの未来研究センター」が「被災地の幽霊」を主題にしたシンポジウムを開いた。今や、幽霊が学術的な研究対象になる事態な […]

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余白の美

(2014/09/08 弘道 第1091号掲載)

 禅宗では修行者の指導に当たる人々を「老師」と呼ぶ。なかには二十代、三十代からそう呼ばれる人もいるが、とにかく免許皆伝になれば、皆「老師」である。  なにゆえここに「老」という文字を使うのか、考えてみよう。  仏教は人生 […]

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うゐの奥山 第29回 驚くべき「共生」

(2014/08/31 東京新聞ほか掲載)

 何年かまえ、ヒトゲノムつまり人間の遺伝子の解読に、各国の学者さんたちが必死になっていた。皆、それが分かったら人間の設計図が分かるのだと、ずいぶん期待しながら待っていたような気がする。どうやら三十億の塩基配列はすべて解読 […]

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日曜論壇 第59回 屋根裏地獄

(2014/08/17 福島民報掲載)

 今年の五月八日から、本堂の改修工事が始まった。周囲に足場を組み、屋根に覆いを掛け、トタンやその下の茅を取り除き、屋組みの一部は壊して作り直す。途中、基礎の台木を入れ替えて水平を取り戻し、壁の表面も塗り直し、建具も作り替 […]

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「水木しげる漫画大全集 神秘家列伝 下巻」解説 「神秘」という名の救済

( 水木しげる漫画大全集 神秘家列伝 下巻掲載)

 神秘について解説をするなんて、じつに不粋な話である。しかも本書で「神秘家」と括られている方々は、誠に多彩である。柳田国男や泉鏡花、平田篤胤など、神秘を精密に記述せんとした人々もいる一方で、仙台四郎の如く、晩年の「没蹤跡 […]

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日曜論壇 第58回 ヒューマン・エラー

(2014/06/15 福島民報掲載)

 世の中に、いまだかつてミスをしたことがないという人はいるのだろうか。おそらく皆無だろう。たとえばヒットラーも、当時のドイツ人が正当な選挙で選んだのだし、イラク戦争も、アメリカの思い込みで堂々と始まってしまった。  アメ […]

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うゐの奥山 第27回 「福島の真実」?

(2014/06/09 東京新聞ほか掲載)

 「福島の真実」が書かれているというので、「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中の漫画『美味(おい)しんぼ』を読んでみた。すると、原作者の雁屋哲(かりやてつ)氏の分身とも思(おぼ)しき山岡某が、福島第一原発を視察しての帰 […]

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うゐの奥山 第26回 震災後文学賞

(2014/05/31 東京新聞ほか掲載)

 二月、三月と、たてつづけに短編集『光の山』(新潮社)で文学賞をいただいた。一つは新聞などに報道もされたから、あるいはご承知の方もいるかもしれない。芸術選奨文部科学大臣賞である。  ところがもう一つのほうは、おそらくご存 […]

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傾聴する僧侶

(2014/05/26 観世流機関誌「観世」掲載)

 昔は「旅の坊主に地侍」と言われた。僧侶は余所で生まれ育った人のほうがよく、侍は地縁血縁などを利用するためにも土地の人のほうがいい、ということだろう。僧侶はどうしてその土地の人でないほうがいいのか、何度か考えたことがある […]

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死にたくなる……

(2014/05/01 こころの科学 2014年5月号掲載)

 これまでの五十七年の人生を振り返ったとき、今でも鮮烈に憶いだすのは初めて「自分も死ぬのか」と知ったときの悲しみである。  悲しみというより、それは今回の東日本大震災における津波のように、まったくどう受け止めていいのかわ […]

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ひとりでに

(2014/04/23 三田文学 NO.117掲載)

 日本語では、「自然に」という意味合いで「ひとりでに」と言う。どうしてそう言うのか、以前から気になっていたのだが、『古事記』を読んでいてはっと気づいた。これは明らかに「独神(ひとりがみ)」のせいだ。突然そう思ったのである […]

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