エッセイ
「全国文学館ガイド」掲載 偏愛が支える熱情
(2005/08/20 全国文学館ガイド掲載)
全てのものごとは複雑に原因が絡み合い、またその場の条件にも左右されながら、私との関係性のなかで起こる。そう考えるのが仏教であり、「縁起」の思想だろう。だから仏教では、単独で固定的な実在を一切認めない。それが「空」の哲学 […]
山からの声
(2005/08/17 北日本新聞掲載)
立山が囁く私の在り方 今年の七月、富山市での講演の翌日、かねて憧(あこが)れていた立山にT氏の案内で出かけた。彼の車で行けるところまで行き、そこから称名の滝まで、ほんの二、三キロ歩いただけだから、とても山に登ったとは云 […]
「ロマンティック・デス-月を見よ、死を想え」解説 月落ちて天を離れず
(2005/12/24 ロマンティック・デス-月を見よ、死を想え掲載)
なんと云えばいいのだろう。解説を書くためにこの本を読み終え、今は少し失語状態である。 たぶんその、大きな原因は、やはり驚きだと思う。世の中に、しかも日本に、こんなことを考えている人がいた……。そういう感じかもしれない […]
のれんに腕押し
(2005年夏 ソニー・ファミリークラブ Zekoo(商品紹介)掲載)
のれんに腕押しというと、こちらのアプローチに対してあまりに反応がなく、張り合いがないことを云う。しかし実際ののれんは、少しだけ反応があって、それが心地いい。 私のように頭を剃っていると、剃った翌日などはのれんの抵抗が […]
日曜論壇 第7回 同期の不思議
(2005/06/19 福島民報掲載)
同期の桜、とは昔から云うが、このところ、科学用語としてもこの「同期」が使われている。 たとえば心臓の孤独な動きも、約一万個のペースメイカー細胞で保たれている。外から電気仕掛けのペースメイカーを入れることもあるが、もと […]
有情の春
(2005/04/26・05/12 中日新聞・東京新聞掲載)
仏教には、この世のすべての物を「有情(うじょう)」と「非情」とで分ける習慣がある。「有情」は唐の玄奘(げんじょう)三蔵が梵(ぼん)語の sattva(サットバ) を訳した言葉で、それ以前は「衆生」と訳されていた。 衆 […]
日曜論壇 第6回 御朱印コレクション
(2005/04/24 福島民報掲載)
世の中にはさまざまなコレクターがいる。切手やコイン、ワインのラベルなど、趣味的なものだけでなく、世に学者と云われる人の多くも、もしかするとある種のコレクターなのかもしれない。他人の言説をまず集め、その反証をコレクション […]
「海を飛ぶ夢」映画評 尊厳死の奥に深い人生と愛
(2005/04/14 朝日新聞掲載)
観(み)おわってしばらく、奇妙な高揚感に包まれた。 ある人々に対してこの映画は、尊厳死に関する映画だと紹介することも可能だろう。主人公のラモンは25歳のときに引き潮の海に飛び込み、海底に頭を強打して首から下が不随にな […]
仏教宇宙 VS 物理宇宙 仏教宇宙が物理宇宙を包み込む
(2005/03/31 AERA臨時増刊 No.19掲載)
宇宙というと、ふつうはOuter Space、つまり地球外の空間を想像されるだろう。しかし初めにお断りしておきたいのは、ここでの宇宙とは空間だけでなく、時間をも含んだ概念であることだ。 「宇宙」という言葉が初めて現れ […]
信者生むネット教育
(2005/03/18 読売新聞掲載)
地下鉄サリン事件から10年 地下鉄サリン事件が起きて10年になる。その間、オウム真理教は宗教法人アーレフと改名して活動を続けている。 上祐史浩氏率いるアーレフは、オウム真理教の負った賠償責任も受け継いだ。総額38億円 […]
言語道断と自業自得
(2005/02/26 地方新聞各紙掲載)
よく耳に馴染んだ四字熟語だと思うが、正確な意味はご承知だろうか。 言語道断(ごんごどうだん)はよく「道」が「同」と間違って書かれるが、本来「道」は「いう」と読み、言語で道(い)うことが難しい不可思議な仏法のこと。禅語 […]
みんなの花
(2005/02/24 月刊ランティエ 特集「読む桜」掲載)
桜はなぜ日本人みんなの花になったのか、考えてみるとよく解らない。 桜は国産の花木だというが、「桜」という文字は、中国からやってきた。むろん中国の漢詩でも桜は古くから登場する。おそらくはそれを真似て『古事記』『日本書紀 […]