風邪の効用

 たまには風邪も引いたほうがいいと、『風邪の効用』(ちくま文庫)を説いたのは野口晴哉(はるちか)氏だった。氏は十二歳で関東大震災に遭遇し、このとき本能的に手をかざして治療した経験から治療家をめざし、やがて野口整体と呼ばれ […]

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忌み詞

 今でも受験前の人など、「すべる」「おちる」といった言葉は忌み嫌って使わないのではないか。使わないどころか、聞くのも見るのも嫌だから、もうここで読みやめる人もいるかもしれない。  植物の葦は、「あし」が「悪し」に通じるか […]

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偉くなった私たち

 昔から、子どもが生まれる直前の夫の様子は、サマにならないものと決まっていた。痛みも実感もないのに、まもなく自分の境遇にとてつもない変化が起こる。これほど落ち着かない時間が男の人生に他にあるだろうか。  生まれてくるのが […]

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人権、この厄介なるもの

 人権とはいったい何だろう。犬や猫には寡聞にして「犬権」や「猫権」があると聞いたことはないが、人間だけにはこの特別な権利が認められているらしい。  最近はタバコを嫌う権利が「嫌煙権」として正式に認められたかに見える。「喫 […]

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ご先祖さまもお元気で!

 このところ何件か、改葬の法要が続いた。改葬、つまりうちの墓地に埋葬されていたお骨を、どこか別な場所に移動するための法要である。「転座供養」とも呼ぶ。  カロート式の納骨堂に納められたお骨なら取り出すのも簡単だが、場合に […]

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五重塔の意地と祈り

 いったいこの国にはどうしてこんなに五重塔が多いのだろう。私が確かめただけでも国宝十一基、重文十四基を含め、全部で四十七基ほどある。単なる観光用の塔も入れると数はさらに増える。  本来、あれは仏舎利塔であり、インドでは饅 […]

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花御供

 標題の言葉をお聞きになったことがあるだろうか。「はなごくう」と訓む。原型は、おそらく光明皇后の次の歌の心だろう。 わがために花は手折らじされどただ三世の諸仏の前にささげん  仏さまのためなら、なんとか花も身を捧げるだろ […]

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不自由ゆえの飛翔

 三月から四月にかけて、いたく体調が悪かった。左手の小指と薬指が痺れだし、整体や鍼、整形外科のお医者さんにも診てもらったのだが、一向に改善しないのである。  本堂でお経をあげるとき、木魚は右手で叩くが、左手でも大きな磬( […]

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みんな同い年

 「うゐの奥山」というタイトルで連載することになった。これはご承知のように、「いろは歌」に出てくる言葉である。 「いろは歌」は、もともと「夜叉説半偈」という死を説いた短いお経を訳したもの。当然、この歌も死について歌ってい […]

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