効率と和合

(2013/03/31 東京新聞ほか掲載)

 先日、奄美大島に行く機会があった。温かさもさることながら、仕事のやり方の違いに感じ入ってしまった。  空港に迎えに来てくれたのはホテルの女性スタッフだったのだが、彼女の運転する車でホテルに着くと、四十代と思しき男性が迎 […]

続きを読む…

丘にあがった船

(2013/02/28 東京新聞ほか掲載)

 久しぶりに気仙沼、女川、石巻などの被災地へ出かけてきた。各地ともすでにガレキと呼ばれた元の生活周辺の品々は片づけられ、ガランとした平原が印象的だった。  なかでもとりわけ目立ったのが、気仙沼の元住宅地まで運ばれた巨大な […]

続きを読む…

「聖域」のゆくえ

(2013/01/31 東京新聞ほか掲載)

 この国の人々は、昔から両極端なものを併用するという変わった性癖をもっていたような気がする。  中国製の漢字(真名)と創案した独自の仮名を両方使うのもその一例だが、仮名も平仮名だけでは済まず、片仮名を併用している。瞬時に […]

続きを読む…

風邪の効用

(2012/12/31 東京新聞ほか掲載)

 たまには風邪も引いたほうがいいと、『風邪の効用』(ちくま文庫)を説いたのは野口晴哉(はるちか)氏だった。氏は十二歳で関東大震災に遭遇し、このとき本能的に手をかざして治療した経験から治療家をめざし、やがて野口整体と呼ばれ […]

続きを読む…

忌み詞

(2012/11/30 東京新聞ほか掲載)

 今でも受験前の人など、「すべる」「おちる」といった言葉は忌み嫌って使わないのではないか。使わないどころか、聞くのも見るのも嫌だから、もうここで読みやめる人もいるかもしれない。  植物の葦は、「あし」が「悪し」に通じるか […]

続きを読む…

偉くなった私たち

(2012/10/31 東京新聞ほか掲載)

 昔から、子どもが生まれる直前の夫の様子は、サマにならないものと決まっていた。痛みも実感もないのに、まもなく自分の境遇にとてつもない変化が起こる。これほど落ち着かない時間が男の人生に他にあるだろうか。  生まれてくるのが […]

続きを読む…

人権、この厄介なるもの

(2012/09/30 東京新聞ほか掲載)

 人権とはいったい何だろう。犬や猫には寡聞にして「犬権」や「猫権」があると聞いたことはないが、人間だけにはこの特別な権利が認められているらしい。  最近はタバコを嫌う権利が「嫌煙権」として正式に認められたかに見える。「喫 […]

続きを読む…

ご先祖さまもお元気で!

(2012/08/31 東京新聞ほか掲載)

 このところ何件か、改葬の法要が続いた。改葬、つまりうちの墓地に埋葬されていたお骨を、どこか別な場所に移動するための法要である。「転座供養」とも呼ぶ。  カロート式の納骨堂に納められたお骨なら取り出すのも簡単だが、場合に […]

続きを読む…

五重塔の意地と祈り

(2012/07/31 東京新聞ほか掲載)

 いったいこの国にはどうしてこんなに五重塔が多いのだろう。私が確かめただけでも国宝十一基、重文十四基を含め、全部で四十七基ほどある。単なる観光用の塔も入れると数はさらに増える。  本来、あれは仏舎利塔であり、インドでは饅 […]

続きを読む…

花御供

(2012/06/30 東京新聞ほか掲載)

 標題の言葉をお聞きになったことがあるだろうか。「はなごくう」と訓む。原型は、おそらく光明皇后の次の歌の心だろう。 わがために花は手折らじされどただ三世の諸仏の前にささげん  仏さまのためなら、なんとか花も身を捧げるだろ […]

続きを読む…

不自由ゆえの飛翔

(2012/05/31 東京新聞ほか掲載)

 三月から四月にかけて、いたく体調が悪かった。左手の小指と薬指が痺れだし、整体や鍼、整形外科のお医者さんにも診てもらったのだが、一向に改善しないのである。  本堂でお経をあげるとき、木魚は右手で叩くが、左手でも大きな磬( […]

続きを読む…

みんな同い年

(2012/04/30 東京新聞ほか掲載)

 「うゐの奥山」というタイトルで連載することになった。これはご承知のように、「いろは歌」に出てくる言葉である。 「いろは歌」は、もともと「夜叉説半偈」という死を説いた短いお経を訳したもの。当然、この歌も死について歌ってい […]

続きを読む…

トップへ戻ります