死んだらどうなるの? 書評 (執筆:鴻巣友季子氏)

死は 無でないと思いたい 

 ある意識調査で、人間は死んでも生き返ると答えた小中学生が一五パーセントもいたそうだ。ホントなの?と思っているところへ、中高生以上をターゲットに創刊した「ちくまプリマー新書」が五冊届いた。玄侑宗久の『死んだらどうなるの?』をひらく。
 僧侶の著者は、仏教の教えを量子力学にも読み替えていく。色即是空の「空」は量子力学の「暗在系」にあたり、その全体運動を感じることが、「お悟り」だという。そして、死後の世界とは生の世界を反映する「できごと(現象)」である、と。なるほど、死は生なのだ。
 人間は死を拒めない。けど無に帰すのではないと思いたい。だから、哲学だって文学だって(アテネの哲人から「セカチュウ」まで)、死は「消失」とは違うのだとひたすら言ってきた。つまり人間は死の恐怖を乗り越えるために、あらゆる芸術を生み出だし、知恵を講じてきたのだ。でも死が簡単にリセットできると思えば、強靭な知恵も生まれてこないんじゃないか。今のゲームやアニメの多くが、死を扱いながら時として命の陰影の深さに欠けるのはそういうわけか。と、この新書を読みながら考えもした。
 初めから死が怖くない人生なんて、つまらないだろうにな。

2005/02/24 日本経済新聞

書籍情報



題名
死んだらどうなるの?
出版社
筑摩書房
出版社URL
発売日
2005/1/27
価格
760円(税別)
ISBN
9784480687036
Cコード
C0210
ページ
160
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