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デリケートな復興の行方
(エッセイ・ 2024/2/11 )

 元日の夕方、私は町内の神社でお参りしたあと、仁王門の下に立ったまま急な揺れを感じた。頭上の梁(はり)がギシギシと鳴り、地面も振動し、すぐに女房のスマホから警報音が聞こえた。そして能登半島方面の地震であることが告げられ、 […]

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桃太郎のユーウツ
(エッセイ・ 2023/12/10 )

 十二月七日、久しぶりに小説集が上梓(じょうし)された。タイトルは標題の『桃太郎のユーウツ』(朝日新聞出版)。この八年余の小説をまとめたものだから、やはり嬉(うれ)しい。今日はこの件について書いてみたい。  そもそも桃太 […]

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成熟した精神
(エッセイ・ 2023/10/8 )

 自室から眺める竹林に、大きな水木(みずき)が見える。東北では「こけし」作りに使われる木で、早春に大量の水を吸い上げるため枝を切ると水が流れ出る。それで水木と呼ぶらしい。階層状の白い集合花も清々(すがすが)しいが、秋に葉 […]

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環境整備
(エッセイ・ 2023/8/6 )

 ここ十年以上、うちのお寺では境内や墓地に草を生やす努力を続けてきた。長年草を毟(むし)りつづけた土壌は硬くなり、雨を吸い込めなくなって桜の下枝が枯れはじめたからである。  草や苔(こけ)の生えた地面は柔らかさを取り戻し […]

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危険な便利さ
(エッセイ・ 2023/6/4 )

 このところ、平穏な日常を突然脅(おびや)かすような事件が相次いでいる。「ルフィ」の指示による全国の強盗事件、あるいは銀座の店での白昼の狼藉(ろうぜき)など、何の因縁もない人々を突然に巻き込む凶悪犯罪である。安全でモラル […]

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文化の力
(エッセイ・ 2023/4/2 )

 ロシアがとうとうウクライナの図書館を破壊しはじめた。いわゆる「焚書(ふんしょ)」で、ウクライナを文化ごと滅ぼそうというのだろう。  焚書といえば始皇帝の「焚書坑儒(こうじゅ)」を憶(おも)いだす。実用書以外の諸子百家の […]

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粘り強い知力
(エッセイ・ 2023/1/30 )

 先日、双葉町の東日本大震災・原子力災害「伝承館」で、二日にわたる興味深い催しに参加した。初日は伝承館の上級研究員である開沼博さんと私との対談、そして夜の懇親会を挟み、二日目は参加者も交えた全員の「対話」である。開沼さん […]

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政教癒着
(エッセイ・ 2022/11/20 )

 ロシア正教トップのキリル総主教は十月末に行なった説教のなかで、プーチン大統領を「主席エクソシスト(払魔師)」と称し、「反キリストを掲げる者に立ち向かう闘士」だと讃えた。  「エクソシスト」といえば昔見た悪魔払いのオカル […]

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国葬儀?
(エッセイ・ 2022/9/18 )

 何年か前から都市部の一部の葬儀社が「火葬儀」というパッケージを売り出した。会社によっては「火葬式」と呼ぶところもある。何のことはない、これまで「直葬」と呼び、お通夜も葬儀も行なわずに火葬するだけのやり方を、尤(もっと) […]

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違いを笑う
(エッセイ・ 2022/7/17 )

 誰もが世界の平和について考える昨今だが、こんな時こそ日本人が作りだした秀逸なシンボルをご紹介したい。七福神である。  七福神とは、インドから大黒さま、弁天さま、毘沙門さまを招き、中国からは寿老人、福禄寿、布袋和尚が加わ […]

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北国の初夏と「宿怨」
(エッセイ・ 2022/5/15 )

 一九四一年四月に結ばれた「日ソ中立条約」は四年後の四月に一方的に破棄を通告され、ソ連は「連合国の参戦要請を受けた」と詐(いつわ)って八月八日に突如日本に宣戦布告した。その動きは一気呵成(かせい)で、翌九日の午前零時から […]

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たまきはる福島基金
(エッセイ・ 2022/2/20 )

 原発事故が起こり、主に故郷から避難した子どもや若者を支援しようと「たまきはる福島基金」を立ち上げたのは二〇一一年の八月だった。立ち上げたといっても私が籏(はた)を振ったわけではなく、県の林業会館にいた渡邊卓治さんとその […]

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