書籍情報
内容
「いのち」の根本とは何か?死と生の意味について考える
「死んだら魂はどこにいくのか?」、「愛する人の死を乗り越えるには、どうしたらよいのか?」。
妹のようだった少女の自殺を忘れられない哲学者が、玄侑和尚と対話を重ね、人と人との時空を超えた縁に導かれていく。平安時代の「いろはうた」に秘められた日本人の死生観、東洋思想の根本に流れる「気」と西洋哲学との違い、仏教の「宿縁」や「縁起」の考え方、「輪廻転生」や「唯識」の世界観など、さまざまな話題が玄侑和尚ならではの、優しくわかりやすい言葉で語られる。圧巻は、過去・現在・未来のすべての生命や事象がつながりながら変化し続けていくという「華厳の思想」。その雄大な世界観は、「いのちの大切さ、人と人のつながり」を見つめ直したい現代にこそ求められる考え方であろう。
ウクライナや中東の戦争の死傷者は増え続け、一方、日本では自殺者が年間3万人を超える。日々、数値化・映像化された「死」に接するばかりで、実感としての死は遠ざかる……。そんな現代人に改めて「いのち」の根本について考えるヒントをくれる一冊です。
もくじ
- 第一章 死が日常化した今、あらためて死について考える
- コロナ禍とウクライナ戦争……、「死」が日常化した現在、あらためて「死」について考える
- 「わがこと」の死と、他者の死の違い
- カミュの『ペスト』で学んだ、死と共感
- 第二章 昔の日本人は「死」をどのように捉えてきたのか
- 死者は物の怪となり、凶事をもたらすと怖れられた平安時代
- 死者の「無念」や「心残り」と、どう折り合っていくのか?
- 「いろは歌」に秘められた日本人の死生観
- 第三章「いのち」の存在は、不滅なのか
- 生命の根本である「存在」とは、どういうものなのか?
- ブッダが捉えた死後の世界、「中道」という考え方
- 「輪廻転生」生まれ変わりを信ずることの功罪
- 第四章 人間の生死の営みには「物語」が必要である
- 仏教を理解するために生まれた「物語」が経典になった
- さまざまな宗派に分かれ、庶民の救済を求めた「鎌倉仏教」
- 「光」と「死」の関係を考える
- 第五章 魂と魂を繋ぐ「縁起」の世界
- 『リーラ』で描いた自殺者の魂が周囲に及ぼす「縁起」とは?
- 神はむすぶもの、仏はほどけるもの
- 「たましひ」とは何か?
- 第六章 人間の本性は善なのか? 悪なのか?
- 親鸞聖人の「悪人正機説」の真意とは?
- 多様な仏教思想に影響を与えた「空」の思想
- この世を四つに分けて捉える「華厳」の世界観
- 第七章 東洋の「気」と西洋哲学の関係を考える
- 時間と空間を超えて万物を繫ぐ「気」の発見
- 「気」を身近に感じる方法とは?
- アリストテレスとプラトンの「イデア」の捉え方
- 第八章 生命力を産みだす「渾沌」とは何か
- 「気」の自己増殖力と日本の神話への影響
- ギリシャ神話の「混沌」と、命を産みだす「渾沌」
- 日本人の精神に根差す、序列なき「両行」の思想
- 第九章 全ては変化しつづける「唯識」のなかで生命を考える
- 「唯識」という考え方を学び、輪廻転生を考える
- 自殺も犯罪も、阿頼耶識に潜む感情エネルギーの爆発が原因
- 全ての「識」は「空」に通ずる
- 最終章 むすんでひらいて 無限の可能性を信じて生きる
- 自殺で大切な人を失った人を慰撫する「次の生」
- 脳内にも侵入する覇権主義の時代にこそ「華厳」の思想
- 「結ぶ」ことで渾沌から産まれる「思い」「ほどく」ことで渾沌に還る「迷い」
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