肌・体・心がよみがえる!

The・呼吸 美容道

呼吸で取り入れる酸素は、私たちの命に、
必要不可欠なエネルギーの源。
肌のキレイ、体の元気のもとであるのは
もちろんですが、さらに「呼吸」には、
脳を落ち着け、心を磨くなどさまざまな効果があります!
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ストレスに打ち勝つ脳内物質も分泌!
東洋の伝統に培われた「吐く息」が脳や心に効くワケを、まずはお勉強
「禅」の呼吸で健やかな心身を育てる
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「調身・調息・調心」という言葉があるように古くから東洋では、“息”を調えることが、“身や心”を調える、という考えがある。その代表格である「禅」は、特に吐く息の効用を説いている。また、科学の視点からも「息」が心に効く理由を、徹底検証!
吸って、吐く―。
生まれたときから当たり前にしている「呼吸」をもっと意識して内側からキレイを磨く!
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「調息・調心」―息ヲ調ヘレバ心モ調フ―
目には見えない「心」にアプローチする、古来伝わる「息」の法
「禅」の呼吸 ―日常生活への取り入れ方
煩悩や迷いにとらわれず、穏やかで豊かな心で生きたい――。
目には見えない「心」を調え、コントロールする方法として
「息」が有効である、と既に古人は、気づいていた。
「禅」を知らない初心者にも、今すぐ取り入れられるエッセンスを、玄侑宗久さんに伺いました。

ゆっくり息を吐き、脱力。それが禅の第一歩

 禅、というと、静かなお堂にじっと坐し、身じろぎひとつせずに過ごすもの、もしほんの少しでも気を抜こうものなら、後ろから長い棒でバシーンと肩を打たれる……、そんな、厳かで苦痛を伴う“修行”をイメージしてしまいがち。
 ところが臨済宗僧侶で作家の玄侑宗久さんによれば、本来、禅は脱力してリラックスできるもの。特に、初心者が初めて坐禅を行うときは、正しいポーズや瞑想法うんぬんといった薀蓄(うんちく)を頭に入れて実践するのではなく、ただただ呼吸に意識を集め、そのときの体の様子を感じてほしい。そうすれば、まずは気持ちよさを感じられるはず、とのこと。“呼吸を意識するだけで、心や体が、こんな風に変化していくんだ”といった面白い発見があるから、と。
「体の力をフッと抜いてリラックスしてみてください。そのとき、自然に息を吐きますよね。逆に、さあ集中しよう、と思うと、息を吸います。もっと集中したときには、息が止まってしまう。無意識のうちに、私たちは心と呼吸を連動させているものなんです。
 日常生活の中では、私たちはつい息を詰めて、短く浅い呼吸になってしまいがちです。だから、呼吸をわざわざ意識するときには、その逆を行って、リラックスする状態を増やせばいい。つまり息を“ゆっくり深く吐く”。それが坐禅の基本なのです。ふだんの生活では、だいたい5秒に1回くらいの呼吸リズムになっているのではないでしょうか? それを、15秒くらいを目安に長くしてみる。これなら、誰にでもすぐにできます。慣れてくると、腹筋がじわじわと鍛えられて、横隔膜も自由に動くようになるから、さらに長く息を吐けるようになりますよ。私の場合、1分間で2回以下、つまり30秒以上、息を吐いてますね」

息の動きを追って意識を動かしてみる

 とはいえ、“目指せ15秒、次は16秒!”と秒数ばかりに気をとられるのはナンセンス。苦しい作業となってしまい、リラックスとは程遠くなる。
「ムキにならなくていいんです。“深くゆっくり吐こう”と意識していれば、だんだん長くなっていきますから。自分の意志で長くするというより、自然と息そのものが変化してくる、という感じですね。むしろ、集中してほしいのは、“今、息がどこを通っているか”と逐一感じることです。“おなかまで入った息が背骨を伝わって上っていく、のどを越えて頭頂まで来たら今度は肩から手のほうへ・・・”と、息の動きを追いかけて、意識を沿わせていくのです」
 玄侑さんは、それを「物事の本当の在り方に寄り添う」と表現する。
「人間は、物事を目の前にして、つい頭を使って括ってしまうんです。例えば雨が降っているとき、地に落ちるひとつひとつの音を聞く、なんてことはしませんよね。雨が降る様子を全体として見て判断して、“しとしと降っているな”、“どしゃ降りだ”といった言語に置き換えてしまうんです。呼吸も同じで、“15秒吐いて、ハイ吸ってー”と数をカウントしているうちは、頭がそちらに行ってしまいます。そうではなく、微細に息の動きそのものを追いかける、意識はただそれを感じる、ということに没頭してほしいのです」
 そうすると、からだの中で微妙な変化が起こってくる。
「漢方では“気血”といいますけれど、意識(気)を動かすと、血液もそこに集まってくるんです。血が集まれば、毛細血管が広がって重くなります。意識だけでも血は動くのですが、呼吸と同時にすることで、ものすごく効果的になります。それは確かです。
 たとえば、体が1本の木になったとイメージしてみます。根っこの部分、つまり足よりもっと下の地面のほうにまで、息を送って意識もそこに置く。そうすると、体がズーンと重くなるんです。逆に、天に伸びる枝(頭上)に向かって、息を送ってみてください。ふわっと体が浮くような感じがします。試しに、誰かに体を横から押してもらってください。根を張ったときはビクともせず、逆に天に向かっているときは軽い力でもよろけてしまう。はっきりと違いが出ます。不思議ですよ。“毛細血管よ、開け”と念じたところで、そのイメージを体に伝えることは難しいのですが、息と同時に意識を動かせば、からだの状態が変わるのが、はっきりとわかるんです」

イメージを駆使し、全身で呼吸する

 初めて坐禅に取り組む人にとって、根っこ(足元)から枝先(頭上)にまで、息を動かすのは難しいかもしれない。そんなときも、イメージ力が役に立つ。
「自分の体を、からっぽなひとつの容器とみなすんです。息を吸うと、足元から水が上がってくる。頭上までいったら、今度は息を吐き、喫水線が徐々に下がってくる。不思議なことに、無理に吐こうと思わなくても、喫水線が体の途中にあれば、さらに吐けてしまうんです。実際には、空気は口から肺にかけて、出入りするだけです。でも、イメージを全身に広げることで、呼吸は確実に変わる。いわゆる外呼吸(体の外から入れた酸素を二酸化炭素と交換する、肺呼吸のこと)だけでなく内呼吸(血液中に取り込んだ酸素を各細胞に送り、ガス交換する、全身呼吸のこと)も意識下に置くわけですね。私はそれを『全身呼吸』と呼んでいます。

呼吸を通じて宇宙とつながる

 呼吸とは、自分の内側に大気を取り込み、そして再び外へ還す作業だともいえる。
「宇宙にあるものを、吸うときに受け取って、出すときに、いらなくなったものをお返しする。つまり呼吸をすることで、宇宙と私が流通する、つながる、という感覚は、昔から世界中にあったんだと思うんです」
 ちなみに英語では、息を吸う・吐くは“インスピレーション”・“エクスピレーション”。そこには、宇宙にある神や霊的なものを感じる、そして死ぬ、といった、より大きなものへのつながりを感じさせる意味も含まれている。
「インドではよりはっきりしていて、“我”という意味で“アートマン”という言葉を使うんですけれど、アートマンのもともとの意味は『気息(きそ)』、つまり呼吸を意味しているんです。ちなみに、“宇宙”は“ブラフマン”。我と宇宙が、息をすることでつながっているという感覚が、言葉に表れているんですね」
 前ページでの、息の動きを、気持ちで追いかける、というのは、つまり外のもの(宇宙的なもの、自然そのもの)が、我に入ってきて、そして出て行くというつながりを、じっくりと意識して味わうということ。そのとき、「自分と宇宙がツーカーで繋がるような、ものすごく広い気持ちになるのです」と玄侑さんは言う。

息を送れば、からだは喜ぶ

 “つながる”という感覚をつかむのが難しければ、呼吸によって宇宙からエネルギーをいただく。だから「からだ様」は喜ぶ。そうとらえてもいい。
「からだが、一つの会社だと考えるとわかりやすいかもしれませんね。あなたという社長のもとに、社員がいっぱい働いている。あなたが夜遅くにごはんを食べたときは、胃袋という社員は、残業を強いられるわけです。でも、社長が『君たち頑張っているかね』と見回ってひと声かけてあげる。つまり胃を意識して息を送ってあげれば、社員は喜んで“がんばろう”と張り切るわけです」
 がんばっているからだに、呼吸という方法を通して、エネルギーをお供えしてあげる。

就寝前の横臥(おうが)禅はリラックス効果大

「痛いところ、冷えているところに、意識して呼吸を送ってみてください。ほわーんと温かくなるような、体が喜んでいる感覚がつかめると思います。寝る前に、布団の上で呼吸を意識する時間をもつのもいいですね。別に坐禅を組まなくても、あお向けに寝た体勢でもいいんです。息の動きに意識を沿わせて、そのほかのことは考えない。そうすると、脳はリラックスして全身が脱力するし、呼吸の届いた場所には気血が集まり温まる。そのまま心地よく眠りにつけることでしょう」

読経は、呼吸のトレーニングになる

 ちなみに、ゆっくり息を吐き、心身を喜ばせるためのトレーニングとして、お経を唱えることは非常に有効なのだそう。
「さまざまな職業があるなかで、実は僧侶という人々は、長生きなんです。なぜかというと、もちろん禅宗の場合は坐禅をするから、というのは大きいのですが、お坊さん全体では日常的な仕事としてお経を上げるから、という理由が考えられます。お経を唱えている間は、ずーっと息を吐いているわけです。否応なしに、呼吸は深く長くなる。般若心経という短いお経(漢字で表記すれば262文字)なら、慣れれば息継ぎは2回で唱えられます。しかも、丸暗記しているものを暗誦するという行為は、脳が特殊な状態になって活性化されるんです。感覚はさえるのに、思考はストップして、吐き出される響きを、ただずっと追いかけているという状態。頭がスーッと覚醒して、とても気持ちがいいのです。般若心経ならすぐに暗記できますから、みなさんも試してみてはいかがでしょう」
 本来、坐禅や読経は、健康や美容を目的として行うものではないけれど・・・と玄侑さん。しかし心身を調える効果があるのは確かなのだから“美しくなりたくて”というきっかけを入り口に、生活に取り入れてみるのも、ひとつの道だといえる。難しく考えず、まずは“深く長く息を吐く”、“呼吸を感じる”、という時間を、1日の中で作ってみることから始めたい。

脳天まで息を吐ききる「全体呼吸」
息を追いかけるのが難しいならば、手をガイドに添えてみると、意識しやすくなる。
吐くときは、臍下の丹田(臍下約10cmくらい)から背骨をつたい、脳天をつきぬけ、さらに肩へ下り、腕を伝って両腕から流れ出る・・・、と全身にくまなく送り流すのを目標に。
身体感覚をリフレッシュする逆立ち
玄侑さんの趣味の一つが、逆立ち。
常に重力を受けている体を正反対にすることで、全身がリフレッシュされる。
“考える脳”が休み、からだに意識を集中できるので、脳の覚醒にも。
忙しい朝には、耳を刺激するだけでも
耳には全身のツボがあるので、くまなく引っ張れば、全身の活性化に。「達磨さん(禅宗の開祖)は耳に大きなピアスをしていますが、肝臓や目を良くするツボを刺激するように、穴をあけているそうです」
最後に手のひらから、息を流しだす。「まるであたたかい卵を持っているかのようになります。気血が集まってくるんです」

2006/08/23 美的掲載

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