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読売新聞 連載

許す心(10)

もう少し社会や人間に寛容になれたら─。そんな思いで、この連載を始めた。「許す心」が求められる背景には、自己責任を強調するあまり、他者への配慮を欠き、余裕を失ってしまった時代の風潮がある。どうしたら、相手を思いやり、寒々とした社会にぬくもりを取り戻せるのか。3人の識者に思いを聞いた。

 「現在の日本は、許し許される心を忘れ、何でも白黒つけたがる方向に進んでいる」僧侶で作家の玄侑(げんゆう)宗久(52)はそう指摘する。
 不祥事を起こした企業の謝罪会見を見ていても、さらに責め立て、それでも許さないという傾向が強まっている。「断罪して裁かなくては気が済まなくなっている」。そこには和を尊ぶ「許し」の代わりに、相手を打ち負かそうとする酷薄な「正義」が透けて見えるという。
 仏教は、物事の原因を一つに求めることをよしとしないという。「物事を白か黒で分けてとらえるのはわかりやすいが、その間には7色があり、そのそれぞれが意味を持っている」と、多様な価値観を認めることの重要性を玄侑さんは説く。
 「宗教では、神や仏のみが与えることができるのが『許し』。人間である自分に誰かを許す資格はあるのか、今一度考えてみることが必要だ」と話す。


※石田衣良さん、内田樹さん、玄侑へのインタビューで、玄侑の部分のみ掲載しています。

2009/01/15 読売新聞掲載

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