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コロナを乗り切る 心をたもつヒント(聞き手・武田爽佳さん)

えりすぐりの言葉を

新たな距離感つかんで

 防疫は、差別を含んだ振る舞いだと思う。放射線は目に見えなくても測定できるが、ウイルスの有無は、すぐには分からない。だから、皆に対し、あるものだと思って接しないといけない。差別との線引きは難しい。
 原発事故後の福島県民、ハンセン病や水俣病の患者への差別は何も生み出さず、人の酷薄さが透けて見えただけだった。今回は属性に関係なく、全員が差別され得る事態となっている。
 「自粛警察」や医療従事者への差別など極端な言動も一部で見られた。自分が思う「正義」を盾に以前からたまっていた日頃の鬱憤(うっぷん)を晴らしているのではないか。
 そうした人たちは、いずれ元の暮らしに戻れると思っているのだろう。「期間限定だから、全員自粛しなければ」と張り切り過ぎているのかもしれない。
 ただ、我慢ばかりの生活は長続きしない。人は、やはり生身の接触を本能的に求めている。今は人との距離をかなり取るようになっているが、今後、じりじりと近づき「これぐらいなら大丈夫」と新たな距離感をつかめるようになってほしい。
 マスク越しのコミュニケーションは、表情が半分見えなくなる。言葉にしなくても「分かってくれているな」と通じ合うことは減る。えりすぐりの、洗練された言葉を使わなければ、人間関係は長続きしないだろう。

2020/07/01 共同通信からの配信記事 熊本日日新聞ほか多数の地方紙掲載

書籍情報



題名
心をたもつヒント 76人が語る「コロナ」
出版社
共同通信社
出版社URL
発売日
2020-09-19
価格
909円(税別)※価格は刊行時のものです。
ISBN
9784764107212
Cコード
ページ
176
当サイトURL

タグ: 心をたもつヒント 76人が語る「コロナ」, 新型コロナウイルス