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慈悲をめぐる心象スケッチ(乾様 56才 東京都 男性)

『慈悲をめぐる心象スケッチ』を読みました。
賢治については大学生の頃からずっと疑問に思っていた事があります。
「春と修羅」の序文を見ると、ほとんど「見性」しているようにも思えるし、他の作品を見ると、存在が語る奇跡を歌うようにも感じられる賢治が、自分についてはどうしてあんな「地獄」を創りだしてしまうのだろうと、疑問でした。こんなにすばらしい人が、なんでこんな目にあうのだろう、と。
けれどもだいぶ前から、「作品」を書く人間とは、やはり「自分の世界」を創りだして発達させてゆく、という形で、それが自分というものの壁を強固に(美しくはあっても)してゆく作業に没頭してゆく、ということなのかな、と思うようになりました。
少年期に死の恐怖を思ったことのある玄侑さん、自らも「作品」を書く玄侑さんが、その賢治を追ったこの本は、本当に興味深く、読んでいて「迫力」を感じました。

タグ: 慈悲をめぐる心象スケッチ