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龍の棲む家(藤森様 36才 女性)

『龍の棲む家』拝読いたしました。
私は21歳の頃、祖母の老いと直面しました。
夜中に徘徊もしました。財布が無いとも言われました。食べた後に食事はまだかと母に騒ぎ立てるのも見ました。おむつをさせていても外してしまい、その外し方も乱雑な為、尿を固まらせるゼリー状の物質を便と共に部屋中にまき散らしているのが日課でした。
家の中は臭くなり、私は顔つき迄変わってしまった祖母の事が怖くて怖くて、避ける様な生活をしてしまいました。
それでも母は祖母をお風呂に入れてあげる度に『子供の様に「気持ちが良い、気持ちが良い」っと何度も言うのよ』っと嬉しそうに私に話すのでした。これが縁側で水盤に浮かぶ花に向かって出たお父さんの「きれいだなぁ」っと言う言葉ときっと同じで、その言葉で耐えられると思った幹夫の心情と、当時私に見せた母の嬉しそう な顔が重なった瞬間でした。
祖母は亡くなる直前迄、一番辛く当るのも母でしたが、最後まで誰だか覚えているのも嫁である母でした。忘れられた父は複雑な思いだったと思うのですが、やはり老いていった祖母も全て分かっていない様でも何か感じているものがあり「加害者から被害者への妄想」を読んだ時、もの凄く理解出来ましたし、また完全に分からないのでは無く心の何処かで分からない事への拒否反応が確実に出ていて、老いている本人も確実に辛いのであるのだろうと思えました。
私は祖母には「優しく寄り添う事」が出来ませんでした。しかし、この「龍の棲む家」が教本となり、両親の老いに対する恐怖心がなくなり、きっと次は「寄り添う事」が出来る様に思えました。

本当に素敵な本を、ありがとうございました。

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