阿修羅(伊藤様 60才 愛知県 女性)

 たいへんおもしろく一気に読ませていただきました。
 4分の1くらい読んだころから,読むにつれ何か落ち着かない感じがつきまとい,だんだんに,それが語り手の主体がはっきりしないことによるものだと気付きました。語り手は登場人物以外にいるようでもあり,場所によっては杉本医師と重なるところもあるのですね。一人称で語られてはいず,「杉本は」と第三者扱いになっているのですが,たとえば128頁に2回出てくる「思う」は,誰が思っているのでしょうか・・・。この小説を英訳するとしたら,主語は「I」か「He」か迷うところがたくさんあるだろうな,と思いました。最初は語り手が登場人物でなかったのが,そのうち杉本医師の意識に流れ入ってしまう・・・語り手の解離?
 『中陰の花』以後,ほとんどを読ませていただいています。『阿修羅』は名古屋での妙心寺展で著者サイン入りの本を見つけて大喜びで購入し,部屋に飾ってゆっくり取り掛かれる時間ができるのを待ちました。阿修羅像は高校生のころから大好きな像ですからなおさらです。
 ご著書を読ませていただくのをいつもほんとうに楽しみにさせていただいています。ますますのご活躍を念じております。

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