書籍情報
内容
禅寺の入婿として副住職の地位につく主人公の理洲には、先物取引に溺れ親の老後の蓄えをすべて失わせた過去がある。悔恨から家出、浮浪者になり果て、最後は寺に拾われ僧侶になる。彼にずっとつきまとうのは人間の欲望と金の関係。禅の修行や気の鍛錬から彼は何を得るのか。風俗嬢や風来坊、寺再建に一億円を寄付する謎の紳士、あるいは不思議な信仰をもつ人びととの邂逅は、彼をどこへ導くのか。単行本未収録の短篇、「宴」を収録。
「何かの価値を決めるのは自分なのだ」という意志を強く持たせてくれる本だった―解説:道尾秀介(作家)
著者から
今度、筑摩書房から『化蝶散華』の文庫版が出る。いろいろ修正もして、また「宴」という作品も併録することにした。共に愛着の強い作品である。今読み返すと、どうしても今は書けないと思ってしまう。若い、というより、呼吸やエネルギーの在り方が違うのだ。今のほうが佳いという意味ではない。ただ人は変化し展開していく。そのことをとても強く感じる二作が、一冊になるのは誠に嬉しい。表紙の絵も気に入っている。解説を道尾秀介さんが書いてくださったことで愛着も一入深まった。是非手にとって、見て、それから読んでみていただきたい。