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私の「大人のための3冊」

  1. 木村 敏 『時間と自己』 中公新書
  2. 福永 光司 『老子』 朝日選書
  3. 清水 良典 『自分づくりの文章術』 ちくま新書

 大人とは、「無常」を心底理解した状態だと思っている。その意味で、人間という存在のゆらぎをまざまざと見せてくれた『時間と自己』を、私は一時携帯していた。文章の格調も、じつに大人を感じさせた。またゆらぎの向こうにある世界を見せてくれたのが福永先生の『老子』だった。そこに表された柔らかくもしぶとい世界観は大人でこそ理解できるだろう。しかしそうは云っても、現実に我々は言葉でゆらぎを抑え、描写という関係性によって自然の分身たる自分をつくっていかなくてはならない。その実際の作法を懇切に教えてくれる本に最近出逢った。『自分づくりの文章術』は、人が言葉で大人になることも教えてくれる。

2004 考える人 冬号

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タグ: 言葉・日本語