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我が家のお正月のしきたり

 我が家には正月のしきたりが、ありすぎるほどある。これは我が家というより、長年のお寺の習慣である。ここでは、そのなかでわりと一般的なものを紹介しよう。
 元朝(がんちょう)の四時に起きて若水(わかみず)を本堂に供え、五時からは一般の人々も参加して坐禅会(ざぜんかい)が行なわれる。その後年頭の挨拶(あいさつ)をしてお屠蘇(とそ)やお酒、海老芋(えびいも)などをふるまうのだが、それが済んで一般の方が帰ってしまうと、それから徐(おもむろ)ろに家族が書院に集まるのである。
 緋毛氈(ひもうせん)のうえに坐(すわ)った家族は、あらためて皆で「明けましておめでとうございます。今年も宜(よろ)しくお願いいたします」と言って挨拶しあう。家族ながらもこんなふうにあらたまって礼を尽くし、お抹茶(まっちゃ)をいただくとき、じつに厳粛な空気がそこには流れる。
 軸物は必ず八方睨(はっぽうにらみ)みの達磨(だるま)図だが、これは禅宗の初祖を意識する、つまり初心に返ることを意味する。
 家族とは、気づいたらいつのまにか家族だったわけだが、本当はこうして共同生活者としてあらためて出逢(であ)い、挨拶を交わすことで家族になるものだろう。その意味では毎朝の出逢いも、小さなお正月である。

2007/12/10 月刊PHP

タグ: 達磨