エッセイ
ウイスキーという作品
(2002/01 文藝春秋掲載)
酒というと鹿児島では焼酎のことだが、酒といえばウイスキーを指した時代が私にはあった。二十代で小説を書き始め、しょっちゅう新宿界隈の飲み屋あたりでウイスキーをロックでやりながら、奇妙な波を描いて氷を溶かす琥珀色の液体を裸 […]
お経と小説
(2002年 THE ZEN 雪山号掲載)
中陰の花が咲き、芥川賞を受賞してしまった(二〇〇一年)。すると全国あちこちの和尚さんたちからたくさんの手紙が届いた。単に喜びと激励の手紙もあるが、多くは「じつは自分も永いこと小説を書いていて……」というもので、そうした […]
中陰ガム
(2001/10 大法輪掲載)
芥川賞の受賞決定後、友人からメイルが届いた。「中陰という言葉を現代日本に浮かび上がらせた宗久さんも大したもんだ。流行語大賞となり、たくさんの人が中陰ガムなんか食べるようになれば今の日本人の知的ユーモアも水準が高いと言え […]
ガン治療の値段
(2001/05/19 読売新聞夕刊掲載)
現在では三人に一人がガンで死ぬ。つまりガンは、最もありふれた死因になってしまった。 ガンになると恐らく誰でも様々な医薬品や健康食品を試みる。それは何にでも縋りたい人情の自然というものだろう。 四月に新潮社から刊行された […]