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海という暗黒
(エッセイ・ 2009/7/25 )

 私が生まれた町は海から遠く、今も私はその町に住んでいる。  その代わりというのも妙だが、町からさほど遠くないところに大きな湖があり、幼いころの私はそれを海だと思っていた。  大きな湖だし深さも百メートル近くあるから、ち […]

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精進料理、あるいはコンニャクの修行のこと
(エッセイ・ 2009/4/6 )

 精進料理と云えば、禅寺など仏教寺院に伝わるいわゆる肉魚抜きの料理を指すことが多い。しかし、どうして肉魚抜きが「精進」なのだろう。  「精進」はもともと仏教の実践法である六波羅蜜の一つ。手間暇惜しまず、結果を期待せず、と […]

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桜が枝垂れたワケ
(エッセイ・ 2009/3/31 )

 今年(二〇〇九年)の二月に朝日新聞が桜についてのアンケートを行なった。全国各地四十本の桜を予めリストアップし、そのなかから自分にとってのベスト3を選ばせたのである。  どうしてそんなに競わせたいのか分からないけれど、と […]

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「生きる」ことと記憶
(エッセイ・ 2007/5/28 )

 通常、記憶というのはコンピュータのメモリーのように、脳のどこかに固定的に貯蔵されているものと思いがちである。しかしどうもそうではなく、憶いだす瞬間に再構築されているらしい。  そのことは、ノーベル賞を受賞した神経学者ジ […]

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三春の桜
(エッセイ・ 2007/3/7 )

 三春町には、いったい桜が何本あるのだろう。  一億円のふるさと創生資金のうち、八千万が桜の植栽に使われた。その時点で本数は吉野を超え、日本一になったのだとも聞いた。むろんそれ以前から紅枝垂れは数多く、四百数十年まえの殿 […]

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「知と愛」~若き葛藤を包み込む息づかい~
(エッセイ・ 2007/2/15 )

再会の読書 ヘルマン・ヘッセ「知と愛」  若い頃、まだ修行に行くまえの私は、宗教と文学との間で揺れていたと、最近は人に話す。しかし冷静に考えると、そのような振り子みたいな迷いではなかったような気がする。  図書館分類学の […]

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再び泣くかもしれない赤鬼
(エッセイ・ 2006/5/10 )

 浜田廣介作『泣いた赤鬼』を初めて読んだのは、小学校の三年生だったろうか。私は読みながら、泣いた。たしか青鬼が手紙を寄越し、心配した赤鬼がその家を訪ねていくのだが、青鬼は遠くへ行ってしまったらしく呼べども答えない。きっと […]

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幽玄に向かうとき
(エッセイ・ 2005/9/21 )

 幽玄といえば、お能を憶いだすかもしれない。幽は「かすか」とも読むが、さまざまなものが渾然としている奥深さ、また玄とはすべての色がそこから出てくる黒のことだ。  能や水墨画の特徴としての認識が強いかもしれないが、これは明 […]

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有情の春
(エッセイ・ 2005/4/26 )

 仏教には、この世のすべての物を「有情(うじょう)」と「非情」とで分ける習慣がある。「有情」は唐の玄奘(げんじょう)三蔵が梵(ぼん)語の sattva(サットバ) を訳した言葉で、それ以前は「衆生」と訳されていた。  衆 […]

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仏教宇宙 VS 物理宇宙 仏教宇宙が物理宇宙を包み込む
(エッセイ・ 2005/3/31 )

 宇宙というと、ふつうはOuter Space、つまり地球外の空間を想像されるだろう。しかし初めにお断りしておきたいのは、ここでの宇宙とは空間だけでなく、時間をも含んだ概念であることだ。  「宇宙」という言葉が初めて現れ […]

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みんなの花
(エッセイ・ 2005/2/24 )

 桜はなぜ日本人みんなの花になったのか、考えてみるとよく解らない。  桜は国産の花木だというが、「桜」という文字は、中国からやってきた。むろん中国の漢詩でも桜は古くから登場する。おそらくはそれを真似て『古事記』『日本書紀 […]

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「みずうみ」という魔界
(エッセイ・ 2004/6/30 )

 川端康成さんの作品が好きだと、どこかで書いたことがある。どこが好きかと考えてみると、むろん細やかな心理の動きを象徴するフェティッシュなまでの具体の鮮やかさ、柔らかな構成や描かれる自然の美しさなどもあるが、何より話が転換 […]

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