エッセイ
こころの科学 2025年9月号 特別企画:パニックと不安 ——多面的な理解と臨床 不安とパニックと「達磨安心」
(1970年1月1日 こころの科学 2025年9月号掲載)
はじめに 「パニックと不安」についての多面的な理解のため、ということで今回私などにも原稿の依頼があった。求められるのは仏教や東洋思想の観点のようだが、今更ながらに後悔しきりである。何より精神医学における不安やパニックに […]
天真を養う 第29回 善とは悪をしないこと
(1970年1月1日 墨 2025年9・10月号 296号(芸術新聞社)掲載)
一行書「諸悪莫作衆善奉行」 大林宗套 室町時代(16世紀) 紙本墨書 1幅 東京国立博物館蔵 出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/) 最古の仏典とされる『法句経(ダンマパダ)』に […]
日曜論壇 第122回 「山の日」に思う
(2025年8月24日 福島民報掲載)
8月11日が「山の日」になったのは2014年、法律の施行は2年後の16年である。この日は、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ための国民の祝日だが、では何故(なぜ)8月11日なのだろう。 まず山に先立って海の […]
蚊遣りの心
(1970年1月1日 『紫野』67号(臨済宗大本山大徳寺)掲載)
世の中に、蚊ほど「困った存在」はなかなかあるまい。「嫌な奴」とまで言わないのは、悪気がないのは分かっているからだ。しかし悪気がないとは言っても、媒介する感染症は夥(おびただ)しく、被害は甚大である。国内での感染に限って […]
天真を養う 第28回 蜘蛛と雨風
(1970年1月1日 墨 2025年7・8月号 295号(芸術新聞社)掲載)
ささがに図 仙厓義梵 江戸時代 18世紀 紙本墨画 1幅 86.0×28.4 慶應義塾蔵(センチュリー赤尾コレクション) 私の手許に、「此竹(このたけ)画讃」と題された仙厓義梵(せんがいぎぼん)(1750~1837)の […]
日曜論壇 第121回 翳る針路
(2025年6月15日 福島民報掲載)
先日、初めてテレビ番組の題字を頼まれて書いた。「翳(かげ)る針路」というタイトルである。ただこの字、行書体で書くと、「翳」にはルビを振らないと読んでもらえないだろうと思い、その部分は平仮名で「かげる」としたのだが、締ま […]
かまくら春秋 55周年記念特大号エッセイ・わたしの想い出 適(たま)たま得て、幾(ちか)し
(2025年5月1日 かまくら春秋2025年5月号 No.661 55周年記念特大号掲載)
僧侶になってからの人生が、なる以前の時間よりも長くなった。近ごろつくづく思うのは、この仕事が如何に受け身で、無計画を旨とするか、ということだ。 むろんお寺とて、年間行事の予定は立てるし、私の場合は原稿の〆切もある。し […]
天真を養う 第27回 羅漢で結構!
(2025年5月1日 墨 2025年5・6月号 293号(芸術新聞社)掲載)
一行書「教外別伝不立文字」 一休宗純 室町時代 15世紀 紙本墨書 東京国立博物館蔵 出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp) 通常は「不立文字(ふりゅうもんじ) 教外別伝(きょうげ […]
日曜論壇 第120回 折れ松
(2025年4月6日 福島民報掲載)
こんな言葉は見たことも聞いたこともないが、そうとしか言いようのない事態が起きた。じつは二月の強風で庭の赤松が折れ、池に向かってほぼ直角に倒れた。樹齢およそ二百年、庭師さんが毎年足場を組んで丹精してきた松だが、今や枝先が […]
天真を養う 第26回 春は花
(2025年3月1日 墨 2025年3・4月号 294号(芸術新聞社)掲載)
一行書「花開万国春」 池大雅 江戸時代 18世紀 紙本墨書 1幅 126.9×27.0 東京国立博物館蔵 出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp) 「春は花」は常套句だが、それもその […]
夢見る「老衰」
(2025年2月10日 がん研有明友の会会報「有明の風」64号掲載)
ここ数年、長く不動だった日本人の死因に大きな変化が現れている。一位悪性新生物(がん)、二位心疾患は変わらないものの、三位だった脳血管疾患が四位に後退し、浮上したのは老衰である。概して言えば、がんと老衰は徐々に増えつづけ […]
日曜論壇 第119回 仏像の時価?
(2025年1月26日 福島民報掲載)
昨秋、私が兼務しているお寺で仏像が盗まれた。総代長からの連絡で行ってみると、離れたお堂の入り口の錠(かぎ)が壊され、三体の仏像と古い燈籠の上部が跡形もない。本堂のほうも、本尊さまをはじめ同じ棚に置かれていた幾つかの仏像 […]