エッセイ
日曜論壇 第51回 春が来た!
(2013/03/31 福島民報掲載)
日本人は、お正月から「頌春」「賀春」と春を讃えている。節分にもまた「春だ」と喜び、そして「春は名のみの風の寒さ」など体験してから、いよいよ本格的な春の到来を植物の芽吹きで知る。「めでたい」はもともと芽が出ようとする状況 […]
虎穴に入る君子
(2013/02/22 家の光掲載)
噂というのは、たいてい不正確なものである。本人から聞くのではなく、間に距離や人間、場合によっては報道なども介在したりするのだから当然のことだろう。 だいたい本人から聞いた話でも、相手はすべてを理解するわけではない。極 […]
日曜論壇 第50回 高橋亨平先生の思い
(2013/01/27 福島民報掲載)
1月22日、南相馬市の原町中央産婦人科医院院長、高橋亨平先生が亡くなられた。 震災後にも病院を離れず、産科に限らずあらゆる人々の医療に心を砕いてこられた。ご自身が震災後に発がんされ、厳しい治療を続けながらの必死な診察 […]
木を植える仏教
(2013/01/01 仏教タイムス掲載)
かつて、木を伐るのは仏教ではないと、老僧が言うのを聞いたことがある。むろん不殺生戒あっての話だが、老僧はいわゆる「開発」に対する仏教の基本的立場も示したかったのだと思う。 もともと寺には寺号のほかに山号がある。これなど […]
金輪際
(2012/12/27 地獄をどう説くか / 2012/07寺族春秋掲載)
禅は六道を、完全に心の旅路として捉える。地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間(じんかん)、天は、いずれ誰もが経験する心の在り方だというのである。 「人間(じんかん)」はもともと、人と人との間だから、世間というような意味あいだっ […]
日曜論壇 第49回 仮設のSさん
(2012/11/25 福島民報掲載)
このところ、三春町の仮設住宅に住む富岡町や葛尾村の方々とおつきあいがある。 昨年の十二月にお寺の「もちつき大会」にご案内を出し、大勢の方々と知り合ったのだが、その後もいろんな機会にお目にかかって親しくなった方々も多い […]
白隠 厳粛かつポップな禅僧
(2012/11/12 ほんとうの仏教入門(中央公論新社)掲載)
白隠慧鶴禅師は貞享二(一六八五)年、駿河の国、原の宿に生まれ、明和五(一七六八)年、八十四歳で遷化(せんげ)した臨済宗の僧である。諡(おくりな)は後桜町天皇から「神機独妙禅師(しんきどくみょうぜんじ)」、明治天皇から「 […]
うゐの奥山 第7回 偉くなった私たち
(2012/10/31 東京新聞ほか掲載)
昔から、子どもが生まれる直前の夫の様子は、サマにならないものと決まっていた。痛みも実感もないのに、まもなく自分の境遇にとてつもない変化が起こる。これほど落ち着かない時間が男の人生に他にあるだろうか。 生まれてくるのが […]
道尾秀介 光媒の花 文庫版解説 「長い目」の作家の祈り
(2012/10/19 光媒の花 文庫版(集英社)掲載)
初めて道尾さんに会ったのは、池袋だった。そのとき彼は私の講演を聴きにきた聴衆の一人で、サイン会に並んでくれた挙げ句、「ミステリーを書いています」などと控えめな自己紹介をした。 正直なところ、私はまだ彼の名前を知らなか […]
仕事をしたり笑ったり
(2012/09/30 イーハトーブセンター会報 第45号掲載)
宮澤賢治の一生は、二つの大災害に挟まれた三十七年間、と見ることもできる。生まれる二ヵ月まえに起きたのが明治三陸大地震(津波)、そして亡くなる半年まえに起きたのが昭和三陸大地震(津波)である。 生まれる以前のことはとも […]
日曜論壇 第48回 全国の線量調査結果
(2012/09/23 福島民報掲載)
福島県内各地の放射線量については、県民なら大抵は把握している。しかしそれが全国各地に比べてどうなのか、となると、皆目分からない人が多い。 どうしてか知らないが、文科省などは全国各地の放射線量を発表しない。そこで三春実 […]
守られた時間と、天恵
(2012/08/26 荘内日報掲載)
世の中では「読書の秋」と言われる。しかし「食欲の秋」でもあり「スポーツの秋」でもあり、また各種イヴェントも秋には目白押しである。忙しすぎて、本など読んでいられないのではないか。 私のなかでは、やはりまとまった読書がで […]