エッセイ
うゐの奥山 第24回 石敢當(いしがんとう)
(2014/03/01 東京新聞ほか掲載)
一月末から二月の初め、日本看護協会の招きを受けて沖縄に出かけてきた。やはり沖縄は別天地、かろうじて零度を上回る福島の気温からすれば、一気に二十度も上昇したことになる。緋寒桜がやや満開をすぎ、菜の花、椿はもちろん、なんと […]
この辺りの幽霊の問題
(2014/02/28 震災学 vol.3掲載)
いま、被災地では、「幽霊の問題」があちこちで起こっている。そのことは、今年(二〇一三年)の七月、京都大学のこころの未来研究センター主催で開かれたシンポジウムでもテーマになった。生憎、私は先約があって出席できなかったのだ […]
日曜論壇 第56回 恵方巻き
(2014/02/09 福島民報掲載)
このところ、節分が近づくとあちこちで恵方巻きが売られるようになった。昔は関西圏にしかなかった習慣のはずだが、どうやらこれを広めたのはコンビニらしい。先日沖縄に行ったら向こうのコンビニ前にも恵方巻き宣伝用の幟(のぼり)旗 […]
アッパレお国ことば~福島・三春町(2) エンガ見た!
(2014/01/01 星座 1月号掲載)
この言葉の詳しい通用域についてはよくわからない。私の住む三春町では使うし、隣町でも聞いたことはあるのだが、果たして福島県中通り全体なのか、それとも県中地区に限るのか、はたまた福島県外でも使うのか、その辺が定かじゃないの […]
日曜論壇 第55回 「見識」から「厳罰」へ
(2013/12/08 福島民報掲載)
特定秘密保護法案が成立してしまった。衆参両院とも強引な形で採決された。先月二十五日に福島市で開かれた公聴会と称する集会では、発言者全員が反対表明や慎重な審議を求めたにもかかわらず、である。通常、こういう拙速なやり方をさ […]
うゐの奥山 第21回 食材偽装とブランド信仰
(2013/12/7 東京新聞ほか掲載)
食材偽装があちこちのホテルや飲食店、果てはデパートでも次々と発覚している。まず思うのは、「どうして発覚したか」だが、やはり理不尽に辞めさせられた元従業員のような人々を想像してしまう。リストラへの「恨み」が、告発の背景に […]
「句集 龍宮」書評 「龍宮」の威力
(2013/10/28 本の旅人 11月号掲載)
俳句について、何ほどのことを知っているわけでもない私だが、それが落語と同じように、日本人への信頼を前提にした表現形式であることはわかる。たとえば芭蕉の「古池や~」の句でも、蛙が池に飛び込んだことはわかるが、「それがどう […]
日曜論壇 第54回 オリンピックと原発
(2013/10/06 福島民報掲載)
9月9日早暁、2020年のオリンピック開催地が、東京と決まった。長年、誘致の努力を重ねてきた人々もいたのだから、その喜びは想像もできる。しかし、「250キロも離れている」福島県民としては、複雑な心境である。 いま、県 […]
心のこもった卒業式
(2013/10/01 コモ・レ・バ? 17号掲載)
「私の生前整理」というシリーズのようだが、たしかに最近は、生前から死後の希望をノートに書いたり、遺言書を書く人が増えているようだ。 私も職業柄、そのような場面に触れる機会が多いのだが、つくづく思うのは、人間、自分の死 […]
さすけねって
(2013/10/01 星座 67号掲載)
このところ、わが三春町では「さすけね」という方言がはやっている。いや、本当は、特にはやっているわけではないと思うのだが、なぜか今年の町のPRポスターに「さすけね」の一言が大書されたのである。 標準語の「差し支えない」 […]
道尾秀介 鏡の花 書評 「死」を孕む「生」の深さ
(2013/10/13 産経新聞掲載)
いったい道尾秀介という作家は、どこまで読者の想像力を信じ、挑みつづけるのだろう? 新刊『鏡の花』は、そう思わずにはいられない仕掛けに満ちていた。 一章でベランダから落ちて死んだはずの翔子が、四章では落ちずに高校生と […]
うゐの奥山 第16回 裁判員制度ふたたび
(2013/07/31 東京新聞ほか掲載)
急に「ふたたび」と言われてもワケがわからないかもしれない。しかし私にとって裁判員制度は、発足当初から反対しており、反対運動にも名を連ねていた。やはり「ふたたび」反対を言わなくてはと思った次第である。 どうして間が抜け […]