エッセイ
うゐの奥山 第33回 桃林の誓い
(2014/12/06 東京新聞ほか掲載)
十一月の初旬、石垣島の桃林寺(とうりんじ)さんというお寺の開創四百年祭にお招きいただき、初めて石垣島にお邪魔してきた。昨年島の空港が新しくなり、羽田からの直行便も増えて便利だが、新鮮な異文化体験だったのでご報告してみた […]
特集 宗教を巡って 社会不安と宗教の移ろい
(2014/12/05 學鐙掲載)
昔から、社会不安と宗教の興隆変化には、一定の因果関係が認められるように思う。簡単に言えば、社会不安が増大することである種の宗教が流行したり、あるいは宗教の内部に変化が起こったりするということだ。宗教である以上、変わらぬ […]
風に吹かれて遍路旅
(2014/10/24 四国遍路と巡礼の旅掲載)
洋の東西を問わず、人間には旅が必要だという認識は、共通しているように思う。 たとえばカール・ブッセの「山のあなた」(上田敏訳『海潮音』所収)では、幸いが山のあなたにあるという思い込みが捨てられない。だから一部の人は、 […]
日曜論壇 第60回 翁忌(おきなき)に思う
(2014/10/19 福島民報掲載)
「翁忌」というのをご存じだろうか。旧暦の十月十二日のことで、松尾芭蕉の命日である。現在の暦ではすでに過ぎたけれど、旧暦で言うならこれからだ。 「翁」と呼ばれる人は、この国では神に近い存在として尊ばれている。現代人とい […]
「最後の希望」としての幽霊たち
(2014/10/17 大法輪 11月号掲載)
東日本大震災以後、東北の被災地では「幽霊」の目撃譚が非常に多く聞かれる。二〇一三年七月には京都大学「こころの未来研究センター」が「被災地の幽霊」を主題にしたシンポジウムを開いた。今や、幽霊が学術的な研究対象になる事態な […]
余白の美
(2014/09/08 弘道 第1091号掲載)
禅宗では修行者の指導に当たる人々を「老師」と呼ぶ。なかには二十代、三十代からそう呼ばれる人もいるが、とにかく免許皆伝になれば、皆「老師」である。 なにゆえここに「老」という文字を使うのか、考えてみよう。 仏教は人生 […]
うゐの奥山 第29回 驚くべき「共生」
(2014/08/31 東京新聞ほか掲載)
何年かまえ、ヒトゲノムつまり人間の遺伝子の解読に、各国の学者さんたちが必死になっていた。皆、それが分かったら人間の設計図が分かるのだと、ずいぶん期待しながら待っていたような気がする。どうやら三十億の塩基配列はすべて解読 […]
日曜論壇 第59回 屋根裏地獄
(2014/08/17 福島民報掲載)
今年の五月八日から、本堂の改修工事が始まった。周囲に足場を組み、屋根に覆いを掛け、トタンやその下の茅を取り除き、屋組みの一部は壊して作り直す。途中、基礎の台木を入れ替えて水平を取り戻し、壁の表面も塗り直し、建具も作り替 […]
「水木しげる漫画大全集 神秘家列伝 下巻」解説 「神秘」という名の救済
( 水木しげる漫画大全集 神秘家列伝 下巻掲載)
神秘について解説をするなんて、じつに不粋な話である。しかも本書で「神秘家」と括られている方々は、誠に多彩である。柳田国男や泉鏡花、平田篤胤など、神秘を精密に記述せんとした人々もいる一方で、仙台四郎の如く、晩年の「没蹤跡 […]
日曜論壇 第58回 ヒューマン・エラー
(2014/06/15 福島民報掲載)
世の中に、いまだかつてミスをしたことがないという人はいるのだろうか。おそらく皆無だろう。たとえばヒットラーも、当時のドイツ人が正当な選挙で選んだのだし、イラク戦争も、アメリカの思い込みで堂々と始まってしまった。 アメ […]
うゐの奥山 第27回 「福島の真実」?
(2014/06/09 東京新聞ほか掲載)
「福島の真実」が書かれているというので、「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中の漫画『美味(おい)しんぼ』を読んでみた。すると、原作者の雁屋哲(かりやてつ)氏の分身とも思(おぼ)しき山岡某が、福島第一原発を視察しての帰 […]
うゐの奥山 第26回 震災後文学賞
(2014/05/31 東京新聞ほか掲載)
二月、三月と、たてつづけに短編集『光の山』(新潮社)で文学賞をいただいた。一つは新聞などに報道もされたから、あるいはご承知の方もいるかもしれない。芸術選奨文部科学大臣賞である。 ところがもう一つのほうは、おそらくご存 […]