エッセイ
看取り先生の遺言 2000人以上を看取った、がん専門医の「往生伝」 解説 「あの世」への旅路
(2016/01/10 看取り先生の遺言 2000人以上を看取った、がん専門医の「往生伝」掲載)
久しぶりに充実した本を読んだ。 岡部健先生のことは、以前から聞き知ってはいた。この本にも登場する、東北大学の鈴木岩弓先生や、宮城県の金田諦應師などの口から聞いたのだと思う。 岡部先生が命名したという「臨床宗教師」の […]
うゐの奥山 第46回 志賀島
(2016/01/09 東京新聞ほか掲載)
先日、講演で福岡へ出かけた折に、女房と志賀島(しかのしま)まで行ってきた。全国でも珍しい砂州による陸繋島(りくけいとう)だが、今では「海の中道」という立派な道路で繋(つな)がり、潮の満ち干に関係なく車で渡れる。 志賀 […]
鶴と亀と還暦
(2016/01/06 うえの掲載)
還暦に思うこと、というご要望なので、一巡した丙申(ひのえさる)までの人生を些か振り返り、いま思うことを書いてみたい。 自分のこれまでの人生を省みると、どうやら私は敷かれたレールからいつも少しずれた道を歩き続けてきたよ […]
お地蔵さんの祈り
(2016/01/06 かまくら春秋掲載)
仏教をいくらか学んだ人なら、お地蔵さんが僧形であるワケもご存じかもしれない。僧侶が独身と決まっていた時代のことだが、僧侶ならいつでもどこへでも助けに来てくれる、「ちょっとこれから、出かけてもいいかなぁ?」などと奥さんに […]
日曜論壇 第67回 入会地という思想
(2016/01/03 福島民報掲載)
中間貯蔵施設が暗礁に乗り上げている。約16万平方キロの予定地に、地権者は約2400人。ところがそのうち、約1200人しか居場所や名前がわからない。残りの1200人ほどは、行方が分からなかったり、また登記の名義人が亡くな […]
うゐの奥山 第44回 なしくずし
(2015/11/07 東京新聞ほか掲載)
「なしくずし」は、本来は「済し崩し」と書く。返済すべき借金などを少しずつでも返し(済し)、借金の山を崩していくことである。 しかし世の中では、ここから転じた別の意味のほうを、むしろ普通に使う。手許(てもと)の辞書によ […]
日曜論壇 第66回 オノマトペ
(2015/11/01 福島民報掲載)
日本語にはオノマトペ、つまり擬音語・擬態語などが五千もあり、世界的にも珍しい言語らしい。たとえば近頃の私の気分も、気鬱や諦念などの漢語では表しきれず、「うんざり」としか言いようがない。 TPPという秘密交渉の、結果の […]
「村上隆の五百羅漢図展」図録掲載 村上マンダラの深化
(2015/10/31 村上隆の五百羅漢図展 図録掲載)
自噴する修行僧のように制作を続けてきた村上隆氏が、今度は五百羅漢図を描いた。しかも見晴るかすことさえ難しい全長100メートルの大幅、高さも3メートルある代物である。戦後日本のアニメやおたく文化を入り口に、江戸期からの伝統 […]
養老孟司 考えるヒト 解説 自然史派のplayfulness
(2015/10/07 考えるヒト 文庫版掲載)
養老先生の本を読む楽しさは、まず何より専門性と総合性が共に味わえることだろう。簡単に言えば深くて広い、ということだが、しかも古きを踏まえ、新しきも充分取り込み、その都度新たに統合されている。思えばこれは、大脳皮質の連合 […]
うゐの奥山 第42回 立秋とお盆
(2015/09/05 東京新聞ほか掲載)
立秋は二十四節気の一つで、今年は八月八日だった。この原稿は八日の晩に書いているのだが、今朝も日没後も確かに風が変わったと感じ、調べてみたら今日がまさに立秋だったのである。 立秋を境に、朝吹く風だけでなく、空もスッと高 […]
「レールの向こう」書評 「レールの向こう」への覚悟
(2015/08/31 波掲載)
沖縄に出かけるたびに大城先生にお目にかかる。初めは二〇〇四年か〇三年か、巫女(ユタ)や神女(のろ)さんを御紹介いただき、『リーラ 神の庭の遊戯』という作品を膨らますことができた。モノレールにほど近いご自宅にもお邪魔し、 […]
日曜論壇 第65回 「洗い」と「石場建て」
(2015/08/30 福島民報掲載)
本堂の改修工事がほぼ終わり、あとは漆塗りなど一部を残すだけになった。山形の加藤工匠の棟梁ほか3人の大工さん、銅屋根を葺(ふ)いてくれた小野工業や鳶(とび)職の面々、左官屋さん、建具屋さんに畳屋さん、そして電機屋さんや洗 […]