エッセイ
傾聴する僧侶
(2014/05/26 観世流機関誌「観世」掲載)
昔は「旅の坊主に地侍」と言われた。僧侶は余所で生まれ育った人のほうがよく、侍は地縁血縁などを利用するためにも土地の人のほうがいい、ということだろう。僧侶はどうしてその土地の人でないほうがいいのか、何度か考えたことがある […]
死にたくなる……
(2014/05/01 こころの科学 2014年5月号掲載)
これまでの五十七年の人生を振り返ったとき、今でも鮮烈に憶いだすのは初めて「自分も死ぬのか」と知ったときの悲しみである。 悲しみというより、それは今回の東日本大震災における津波のように、まったくどう受け止めていいのかわ […]
ひとりでに
(2014/04/23 三田文学 NO.117掲載)
日本語では、「自然に」という意味合いで「ひとりでに」と言う。どうしてそう言うのか、以前から気になっていたのだが、『古事記』を読んでいてはっと気づいた。これは明らかに「独神(ひとりがみ)」のせいだ。突然そう思ったのである […]
日曜論壇 第57回 「中間」貯蔵施設の行方
(2014/04/13 福島民報掲載)
福島県議会も福島県も、放射性廃棄物の貯蔵については、一旦双葉郡の大熊町や双葉町などで「中間」貯蔵するものの、三十年以内に県外に持っていくという条件で話を進めつつある。 しかしいったい、どこへ持っていくことが可能だとい […]
うゐの奥山 第24回 石敢當(いしがんとう)
(2014/03/01 東京新聞ほか掲載)
一月末から二月の初め、日本看護協会の招きを受けて沖縄に出かけてきた。やはり沖縄は別天地、かろうじて零度を上回る福島の気温からすれば、一気に二十度も上昇したことになる。緋寒桜がやや満開をすぎ、菜の花、椿はもちろん、なんと […]
この辺りの幽霊の問題
(2014/02/28 震災学 vol.3掲載)
いま、被災地では、「幽霊の問題」があちこちで起こっている。そのことは、今年(二〇一三年)の七月、京都大学のこころの未来研究センター主催で開かれたシンポジウムでもテーマになった。生憎、私は先約があって出席できなかったのだ […]
日曜論壇 第56回 恵方巻き
(2014/02/09 福島民報掲載)
このところ、節分が近づくとあちこちで恵方巻きが売られるようになった。昔は関西圏にしかなかった習慣のはずだが、どうやらこれを広めたのはコンビニらしい。先日沖縄に行ったら向こうのコンビニ前にも恵方巻き宣伝用の幟(のぼり)旗 […]
アッパレお国ことば~福島・三春町(2) エンガ見た!
(2014/01/01 星座 1月号掲載)
この言葉の詳しい通用域についてはよくわからない。私の住む三春町では使うし、隣町でも聞いたことはあるのだが、果たして福島県中通り全体なのか、それとも県中地区に限るのか、はたまた福島県外でも使うのか、その辺が定かじゃないの […]
日曜論壇 第55回 「見識」から「厳罰」へ
(2013/12/08 福島民報掲載)
特定秘密保護法案が成立してしまった。衆参両院とも強引な形で採決された。先月二十五日に福島市で開かれた公聴会と称する集会では、発言者全員が反対表明や慎重な審議を求めたにもかかわらず、である。通常、こういう拙速なやり方をさ […]
うゐの奥山 第21回 食材偽装とブランド信仰
(2013/12/7 東京新聞ほか掲載)
食材偽装があちこちのホテルや飲食店、果てはデパートでも次々と発覚している。まず思うのは、「どうして発覚したか」だが、やはり理不尽に辞めさせられた元従業員のような人々を想像してしまう。リストラへの「恨み」が、告発の背景に […]
「句集 龍宮」書評 「龍宮」の威力
(2013/10/28 本の旅人 11月号掲載)
俳句について、何ほどのことを知っているわけでもない私だが、それが落語と同じように、日本人への信頼を前提にした表現形式であることはわかる。たとえば芭蕉の「古池や~」の句でも、蛙が池に飛び込んだことはわかるが、「それがどう […]
日曜論壇 第54回 オリンピックと原発
(2013/10/06 福島民報掲載)
9月9日早暁、2020年のオリンピック開催地が、東京と決まった。長年、誘致の努力を重ねてきた人々もいたのだから、その喜びは想像もできる。しかし、「250キロも離れている」福島県民としては、複雑な心境である。 いま、県 […]