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エッセイ


名作ここが読みたい ジロリの女(坂口安吾) どこまでも平行線の宿命 切ない求道の物語「ジロリの女」

(2007年10月20日 週刊KODOMO新聞掲載)

主人公の40代の男、ゴロー三船は、知的で気の強い女性を「ジロリの女」と呼ぶ。そういうタイプの女性は、心を見抜くように三船の顔を冷たくジロリと見るからだ。誰にでも軽口やお世辞を言う調子のいい男、三船は、苦手な「ジロリの女」 […]

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日曜論壇 第20回 奈落の月

(2007年10月7日 福島民報掲載)

 今年の仲秋の名月は、九月二十五日だった。坐禅会の終わった十時すぎに夜空を見上げると、薄曇りではあったがそれでも大きな月がかかっていた。  上座部仏教圏では、お釈迦さまが生まれたのも成道されたのも、亡くなったのも満月の日 […]

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特集「写経を始めてみませんか」 涼風に出逢う旅

(2007年9月1日 墨 2007年9・10月号掲載)

 長年文字を書くうちに、我々はどうしても自分らしいクセを身につけてしまう。撥ね方、抜き方、止め方にも、その人独特の個性がにじむものだ。そのことじたいは自然なことだし、善くも悪くもない。むしろ活字のような文字ではつまらない […]

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日曜論壇 第19回 ちょっと待って!

(2007年8月5日 福島民報掲載)

 待たなくていい世の中になってきた。「三分間、待つのだよ」という宣伝もすでに古く、「お待たせしません三十秒」というのまである。  だから人は、待てなくなった。特に携帯電話の普及によって時差も距離も関係なくなってしまったか […]

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過渡的な解決策としての「赤ちゃんポスト」

(2007年6月12日 日経EW掲載)

 昔は、産んでしまえばなんとかなるさ、という楽観が社会に支配的だった。「案ずるより産むがやすし」ということわざも、その経験的実感に支えられていた。  しかし今や、育てられそうもないから中絶する、という考え方のほうが常識的 […]

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日曜論壇 第18回 若冲展に思う

(2007年6月3日 福島民報掲載)

 京都相国寺の承天閣美術館で開かれている若冲展に行ってきた。  これほど人が行列しているのを見たのは何年ぶりだろうか。パンダかモナリザを憶いださせる盛況ぶりだった。しかもそこに私が並んだのだから珍しい。ふだんはたとえどん […]

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現代人のための「チベット死者の書」書評 クリエイティヴな死の稽古が生の質を変える

(2007年5月29日 週刊朝日掲載)

 我々の経験する世界は、じつは「心」や「無意識」によって支えられ、成り立っている。それは仏教的常識というより、今や脳科学的な知見と云ってもいいだろう。脳内にインストールされているソフトに見合った体験しか、我々はしないので […]

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「生きる」ことと記憶

(2007年5月28日 教育と医学掲載)

 通常、記憶というのはコンピュータのメモリーのように、脳のどこかに固定的に貯蔵されているものと思いがちである。しかしどうもそうではなく、憶いだす瞬間に再構築されているらしい。  そのことは、ノーベル賞を受賞した神経学者ジ […]

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日曜論壇 第17回 嗜好品という文化

(2007年4月15日 福島民報掲載)

 広辞苑によれば、栄養摂取を目的とせず、香味や刺激を得るための飲食物を「嗜好品」という。酒やお茶、コーヒー、タバコなどが例示されるが、どんな嗜好品を好むかは人それぞれ。だからこそ嗜好品を認めることは信教の自由と同じく人の […]

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三春の桜

(2007年3月7日 ミセス掲載)

 三春町には、いったい桜が何本あるのだろう。  一億円のふるさと創生資金のうち、八千万が桜の植栽に使われた。その時点で本数は吉野を超え、日本一になったのだとも聞いた。むろんそれ以前から紅枝垂れは数多く、四百数十年まえの殿 […]

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「知と愛」~若き葛藤を包み込む息づかい~

(2007年2月15日 月刊 本の時間掲載)

再会の読書 ヘルマン・ヘッセ「知と愛」  若い頃、まだ修行に行くまえの私は、宗教と文学との間で揺れていたと、最近は人に話す。しかし冷静に考えると、そのような振り子みたいな迷いではなかったような気がする。  図書館分類学の […]

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日曜論壇 第16回 約束

(2007年1月28日 福島民報掲載)

 人はさまざまな約束をしながら生きている。明日の約束もあれば、死ぬまでにきっと、という誓いのようなものもある。キリスト教圏には神との契約という考え方があるが、これだって約束の一種に違いない。  人はなぜ、約束するのか。そ […]

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