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エッセイ


日曜論壇 第10回 いくつもの春

(2006/01/08 福島民報掲載)

 日本人は何度も春を祝う。  お正月には「頌春」とか「寿春」と書き、もう春を祝っている。また節分は本来一年に四回あり、立春、立夏、立秋、立冬の前日をすべて「節分」と呼ぶのに、特に立春の前日だけを行事として祝う。  春の節 […]

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「白」を信じる

(2006/01/01 白い国の詩 冬号掲載)

 東北を「白い国」と表現するのは、きっと雪のイメージなのだろう。しかし私にとっての「白」は、もっと様々な印象を喚起する。  まずは菩提心の「白」。悟りとしての菩提を求める心が、白衣観音の衣装になる。花嫁衣装の白無垢も、何 […]

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あらきそばと判官贔屓

(2005/12/25 季刊新そば掲載)

 本当のことを云うと、私はうどん党である。ソバとうどんが両方ある店に入れば、必ずうどんを頼む。今回のご依頼があったときも、私はそう申し上げたのだが、それでも何か書くようにと仰る。  べつにソバが嫌いというわけではない。云 […]

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三つの言葉

(2005/12/10 文藝春秋掲載)

各界の有識者32名が選んだ時代を象徴する3つの言葉 「正義」「効率」「遊ばない」  私は今年、『やおよろず的』という本を出したが、世界はそんなことにお構いなく、正義を振りかざす人々に満ちている。正義を認めないから「やおよ […]

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日曜論壇 第9回 ネコとヒトの教育

(2005/10/30 福島民報掲載)

 最近、どうも屋根裏にネズミがいるようだ。本堂の屋根裏にはハクビシンがいるからそちらには行かないのだろうが、庫裏ではときどきネズミが何かを転がして遊んだりする。  やはりネコもイヌもいなくなってしまったからだろう。昔はネ […]

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「いのちの日記-神の前に、神とともに、神なしに生きる」書評 病魔に冒された科学者が辿り着いた「神なき信仰」

(2005/10/21 週刊ポスト 味わい本発見 この分野はこれを読め!掲載)

 生命科学の先端を歩んでらした柳澤さんの原因不明の病苦については、以前から聞き及んでいた。  ようやく食器が洗えるようになった柳澤さんがいつかテレビに映っており、苦しさを訴えるのではなく、「食器の積み方を楽しむ」と仰って […]

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鏡板の老松

(2005/10/05 月刊国立能楽堂掲載)

 能舞台の正面奥の鏡板には、必ず老松の絵が描かれている。これはもともと、奈良春日大社の一の鳥居のところの影向の松の下で神事が行われたことに由来するらしい。  松は昔から、神の天降りを「待つ」神聖でめでたい木とされてきた。 […]

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剃髪への目覚めと、その後

(2005/10/01 月刊正論掲載)

 初めて頭を丸めたのは、小学校三年のときだった。これは綽名が「ぼうず」であったため、それに反抗する気分からだろう。「おうさ、坊主になってやろうじゃないか」という程度の、少年とすれば少し自虐的だが、勇敢な冒険だったのだと思 […]

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幽玄に向かうとき

(2005/09 臨済会報掲載)

 幽玄といえば、お能を憶いだすかもしれない。幽は「かすか」とも読むが、さまざまなものが渾然としている奥深さ、また玄とはすべての色がそこから出てくる黒のことだ。  能や水墨画の特徴としての認識が強いかもしれないが、これは明 […]

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「隻手の音なき声 ドイツ人女性の参禅記」書評 禅体験の、新しい古典!

(2005/09/03 玄侑宗久公式サイト書き下ろし掲載)

 なんという真摯な魂の記録、そしてなんという禅の本質的な表現であることだろう。それがこの『隻手の音なき声』(リース・グレーニング著、上田真而子訳、筑摩書房)を読みながら、何度も何度も私の胸に波のように押し寄せた思いであっ […]

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「もらい笑い」の思い出

(2005/09/01 月刊日本橋掲載)

 最近はあまり聞かないが、かつて中国には泣き女・泣き男という習慣があった。つまり儒教で葬儀をするに際し、儒教には僧侶に当たる人がいないので、儀式ぜんたいを泣くことで盛り上げ、ある種のカタルシスにまで運んだのだろう。  唐 […]

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日曜論壇 第8回 電話の電話、郵便の郵便

(2005/08/28 福島民報掲載)

 最近どうも、電話に関係した電話が多い。要するに、新しいシステムができて、これまでより安くなるので加入しないか、というお誘いのようだが、どうも要領を得ない。  要領を得ないだけでなく、なかには詐欺的な手法をとるところもあ […]

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