エッセイ
「人生後半、はじめまして」書評 人生後半、はじめまして
(2019/2/25 週刊現代ブックレビュー掲載)
岸本さんの文章の魅力は、理路整然として、しかもスキップするような独特のリズムにある。しかしそのスキップのために、彼女がこれほど努力しているとは知らなかった。筋肉や骨はむろんのこと、歯や眼の衰えにも対処し、努力を惜しまな […]
日曜論壇 第85回 仮設トイレでの快哉
(2019/02/17 福島民報掲載)
シナイ半島への陸自派遣が決まった。二回目の米朝首脳会談も決まり、日ロの領土交渉も大詰めに向かいつつある。世の中を見まわすと息苦しい出来事に満ち、また私も原稿の〆切が間近に迫っていたのだが、二月十日のお寺ではそれどころで […]
日曜論壇 第84回 12月8日
(2018/12/16 福島民報掲載)
12月8日といえば、我々禅僧にとっては特別な日だ。お釈迦(しゃか)さまが今からおよそ2500年前、12月8日の明けの明星を見て大いなる覚醒を得たという。その覚醒を追体験しようと、あちこちの道場では7日間、ほぼ不眠不休と […]
「両行」とこころのレジリエンス
(2018/12/05 精神療法 第44巻6号(金剛出版)掲載)
この国の諺(ことわざ)を眺めると、対立する意味合いの諺が必ずと言っていいほどあることに気づく。たとえば「善は急げ」と「急がば廻れ」、「嘘も方便」と「嘘つきは泥棒の始まり」、「一石二鳥」と「虻蜂取らず」、「大は小を兼ねる […]
ネットとキノコ
(2018/11/25 日本経済新聞掲載)
裏社会、というと、普通はヤクザやマフィアの世界を想うことだろう。しかしここで私が言いたいのは「ネット社会」のことである。最近はバッシングといえば自ずとネット上のことを想像する。いじめの多くもネットを介して行なわれている […]
日曜論壇 第83回 まだ高い薬価と「偽増悪」
(2018/10/14 福島民報掲載)
十月一日、今年のノーベル生理学・医学賞に、本庶佑(ほんじょたすく)先生の受賞が決まった。先生の最大の功績は、おそらく「がん免疫療法」に道を拓(ひら)いたことだと思うが、これはじつに画期的なことである。 がんといえば、 […]
日曜論壇 第82回 無茶
(2018/08/12 福島民報掲載)
筋道が立たないこと、道理に合わないことを昔から「無茶」という。誰もが何度も口にした言葉だと思うが、「無茶」はどうして「無茶」と書くのだろう? 小学館の『日本国語大辞典』によると、「無茶」はあて字、「無茶苦茶」もあて字だ […]
猫と涅槃図(ねはんず)
(2018/06/12 ねこ新聞掲載)
涅槃図というものをご存じだろうか。お釈迦(しゃか)さまが亡くなったとき、弟子たちだけでなく多くの動物たちも悲しんだとされ、その様子を絵に描いた軸物が大抵のお寺に所蔵されている。それが涅槃図である。 これは普通、お釈迦 […]
日曜論壇 第81回 「たまきはる福島基金」の今
(2018/06/10 福島民報掲載)
先日、「たまきはる福島基金」の理事会兼総会を郡山で開催した。今年で七年目に入る同基金の活動などを紹介したい。 もともとこの活動は、東日本大震災による甚大な被害を受けた市町村の、子供や若者たちを後押しするような活動を支 […]
日曜論壇 第80回 愛姫生誕四百五十年
(2018/04/08 福島民報掲載)
お寺ではあまり生誕何年というお祝いはしないのだが、今年は永禄十一(一五六八)年に生まれた愛(めご)姫(ひめ)の誕生から四百五十年めになる。福聚寺の開基田村家のご息女であるわけだし、年忌ではないが無視するわけにもいくまい […]
めでたい花まつり
(2018/04/01 うえの掲載)
お釈迦さまの誕生を祝うお祭りは、アジアだけでなく世界各地で行なわれている。灌仏会(かんぶつえ)とか降誕会(ごうたんえ)、また明治以降は「花まつり」という呼称も使われるようになった。その誕生を祝福し、九頭の龍が現れて産湯 […]
日曜論壇 第79回 聖「冬のポンプ屋さん」
(2018/02/04 福島民報掲載)
職業に貴賤(きせん)はないし、どの仕事もそれなりに大変なのはむろん承知している。海幸彦山幸彦の話を持ちだすまでもなく、どだい比べようがないのだし、かの福沢諭吉先生も他人の職業を羨(うらや)むことは世の中で最も下品なこと […]