エッセイ
ネットとキノコ
(2018/11/25 日本経済新聞掲載)
裏社会、というと、普通はヤクザやマフィアの世界を想うことだろう。しかしここで私が言いたいのは「ネット社会」のことである。最近はバッシングといえば自ずとネット上のことを想像する。いじめの多くもネットを介して行なわれている […]
日曜論壇 第83回 まだ高い薬価と「偽増悪」
(2018/10/14 福島民報掲載)
十月一日、今年のノーベル生理学・医学賞に、本庶佑(ほんじょたすく)先生の受賞が決まった。先生の最大の功績は、おそらく「がん免疫療法」に道を拓(ひら)いたことだと思うが、これはじつに画期的なことである。 がんといえば、 […]
日曜論壇 第82回 無茶
(2018/08/12 福島民報掲載)
筋道が立たないこと、道理に合わないことを昔から「無茶」という。誰もが何度も口にした言葉だと思うが、「無茶」はどうして「無茶」と書くのだろう? 小学館の『日本国語大辞典』によると、「無茶」はあて字、「無茶苦茶」もあて字だ […]
猫と涅槃図(ねはんず)
(2018/06/12 ねこ新聞掲載)
涅槃図というものをご存じだろうか。お釈迦(しゃか)さまが亡くなったとき、弟子たちだけでなく多くの動物たちも悲しんだとされ、その様子を絵に描いた軸物が大抵のお寺に所蔵されている。それが涅槃図である。 これは普通、お釈迦 […]
日曜論壇 第81回 「たまきはる福島基金」の今
(2018/06/10 福島民報掲載)
先日、「たまきはる福島基金」の理事会兼総会を郡山で開催した。今年で七年目に入る同基金の活動などを紹介したい。 もともとこの活動は、東日本大震災による甚大な被害を受けた市町村の、子供や若者たちを後押しするような活動を支 […]
日曜論壇 第80回 愛姫生誕四百五十年
(2018/04/08 福島民報掲載)
お寺ではあまり生誕何年というお祝いはしないのだが、今年は永禄十一(一五六八)年に生まれた愛(めご)姫(ひめ)の誕生から四百五十年めになる。福聚寺の開基田村家のご息女であるわけだし、年忌ではないが無視するわけにもいくまい […]
めでたい花まつり
(2018/04/01 うえの掲載)
お釈迦さまの誕生を祝うお祭りは、アジアだけでなく世界各地で行なわれている。灌仏会(かんぶつえ)とか降誕会(ごうたんえ)、また明治以降は「花まつり」という呼称も使われるようになった。その誕生を祝福し、九頭の龍が現れて産湯 […]
日曜論壇 第79回 聖「冬のポンプ屋さん」
(2018/02/04 福島民報掲載)
職業に貴賤(きせん)はないし、どの仕事もそれなりに大変なのはむろん承知している。海幸彦山幸彦の話を持ちだすまでもなく、どだい比べようがないのだし、かの福沢諭吉先生も他人の職業を羨(うらや)むことは世の中で最も下品なこと […]
「竹林」……この厄介で魅力的な場所
(2018/01/09 一冊の本掲載)
竹林とは不思議な場所である。風水ではその土地の歪みを矯正し、弱点を補うために竹を植えると聞いたこともある。また竹は地味豊かな土にしか生えないとされ、豊かな土壌の象徴でもある。 しかし最近は手が入れられず、放置されたま […]
日曜論壇 第78回 民主主義の赤字
(2017/12/3 福島民報掲載)
今朝もまた、ミサイルが飛んだらしい(十一月二十九日)。午前四時まえのことで、全国瞬時警報(Jアラート)も鳴らなかったから、知らない人も多いようだ。 青森県の漁師さんたちは相当緊張しただろうが、殆んどは「え? そうなの […]
うゐの奥山 第66回 無熱の慈しみ
(2017/10/31 東京新聞ほか掲載)
北朝鮮のミサイルが止まらない。核実験も続いている。九月十五日朝のミサイルは、襟裳岬上空を通りながら三、七○○kmを飛んだ。最早明らかにグアム島も射程内である。 韓国では同じ頃、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が地対地弾 […]
日曜論壇 第77回 山繭さま
(2017/10/01 福島民報掲載)
この夏、女房が伊達市の「霊山こどもの村」で、繭(まゆ)を使ったワークショップを行なった。繭から純白の糸をほぐし、それを自分なりに膨らませた風船にもう1度巻きつけ、乾いたら風船を割る。すると自分だけの形の繭ができあがると […]