エッセイ

人生後半、はじめまして

(2019/2/25 週刊現代ブックレビュー掲載)

 岸本さんの文章の魅力は、理路整然として、しかもスキップするような独特のリズムにある。しかしそのスキップのために、彼女がこれほど努力しているとは知らなかった。筋肉や骨はむろんのこと、歯や眼の衰えにも対処し、努力を惜しまな […]

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さようなら

(2019/01/30 東京新聞ほか掲載)

 日本人の挨拶はとても味わい深いと思う。「こんにちは」では昨日までと違う今日が期待され、今日こそ心機一転また出直すことが促される。仏教的には「寂滅現前」で、昨日までの自分を寂滅させ、新たに生まれ直すのである。震災後は特に […]

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「両行」とこころのレジリエンス

(2018/12/05 精神療法掲載)

 この国の諺(ことわざ)を眺めると、対立する意味合いの諺が必ずと言っていいほどあることに気づく。たとえば「善は急げ」と「急がば廻れ」、「嘘も方便」と「嘘つきは泥棒の始まり」、「一石二鳥」と「虻蜂取らず」、「大は小を兼ねる […]

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金と銀

(2018/11/30 東京新聞ほか掲載)

 その昔、金と銀とは対等で別な価値と考えられていた。貨幣に用いた基準も、西日本では銀本位、東日本では金本位だった。  両者を測れる共通の物差しはなく、金の価値観で見れば銀はくすんでいるが、銀にすれば金の光り方など嫌らしい […]

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ネットとキノコ

(2018/11/25 日本経済新聞掲載)

 裏社会、というと、普通はヤクザやマフィアの世界を想うことだろう。しかしここで私が言いたいのは「ネット社会」のことである。最近はバッシングといえば自ずとネット上のことを想像する。いじめの多くもネットを介して行なわれている […]

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壁と三和土の魅力

(2018/10/31 東京新聞ほか掲載)

 建築用語には古来の和語もあれば、外来の言葉もある。代表的なものとしては、「塀」や「柵」や「門」などが中国伝来の漢語。どうやら外との仕切りについての日本人の興味は、中国人に比べると些か希薄だったように思える。そういえば「 […]

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まだ高い薬価と「偽増悪」

(2018/10/14 福島民報掲載)

 十月一日、今年のノーベル生理学・医学賞に、本庶佑(ほんじょたすく)先生の受賞が決まった。先生の最大の功績は、おそらく「がん免疫療法」に道を拓(ひら)いたことだと思うが、これはじつに画期的なことである。  がんといえば、 […]

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「陰翳」の功徳

(2018/09/30 東京新聞ほか掲載)

 陰翳といえば、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を抜きにしては語れない。これは昭和八年に書かれ、前後半に分けて発表されたのだが、今読んでも、というより、今こそ非常に面白く読める文明論である。  建築や庭、器、食事、歌舞伎や能、そ […]

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池さらい

(2018/08/31 東京新聞ほか掲載)

 人「さらい」という場合は「攫い」と書くが、池「さらい」だと「浚い」になる。誠に日本語は厄介だが、先日その池浚いを久しぶりにしたので報告したい。  うちのお寺には何百年前からあるのかよくわからない池があるのだが、永年のう […]

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無茶

(2018/08/12 福島民報掲載)

 筋道が立たないこと、道理に合わないことを昔から「無茶」という。誰もが何度も口にした言葉だと思うが、「無茶」はどうして「無茶」と書くのだろう? 小学館の『日本国語大辞典』によると、「無茶」はあて字、「無茶苦茶」もあて字だ […]

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ホトトギスとウグイス

(2018/07/31 東京新聞ほか掲載)

 裏山でホトトギスが、庭でウグイスが鳴いている。ウグイスはもちろん梅の季節から初々しく鳴きだし、今では臈長けた声で「ホー法華経」どころかもっと複雑な鳴き方もする。時折、自分の声に酔っているのではないかと思うことさえあり、 […]

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「たまきはる福島基金」の今

(2018/06/10 福島民報掲載)

 先日、「たまきはる福島基金」の理事会兼総会を郡山で開催した。今年で七年目に入る同基金の活動などを紹介したい。  もともとこの活動は、東日本大震災による甚大な被害を受けた市町村の、子供や若者たちを後押しするような活動を支 […]

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しゃがむ土偶

(2018/05/31 東京新聞ほか掲載)

 夕焼け空にカラスが飛ぶのを見て、ふと「七つの子」を憶いだした。「カラス、なぜ鳴くの? カラスは山に、可愛い七つの子があるからよ」(野口雨情作詞)というあの曲である。  そしてこれまた自然に、大学時代に中国から留学してい […]

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忖度と談合

(2018/04/30 東京新聞ほか掲載)

 うちの地方では法事などの墓参の際に、お墓で「だんご」を食べる習慣がある。最近は普通のお菓子だったりもするが、「だんご」が出てくると必ず誰かが子供に向かって言う。「このだんご食べると、頭がよくなるんだぞ」。  そこで私は […]

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愛姫生誕四百五十年

(2018/04/08 福島民報掲載)

 お寺ではあまり生誕何年というお祝いはしないのだが、今年は永禄十一(一五六八)年に生まれた愛(めご)姫(ひめ)の誕生から四百五十年めになる。福聚寺の開基田村家のご息女であるわけだし、年忌ではないが無視するわけにもいくまい […]

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めでたい花まつり

(2018/04/01 うえの掲載)

 お釈迦さまの誕生を祝うお祭りは、アジアだけでなく世界各地で行なわれている。灌仏会(かんぶつえ)とか降誕会(ごうたんえ)、また明治以降は「花まつり」という呼称も使われるようになった。その誕生を祝福し、九頭の龍が現れて産湯 […]

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国土について

(2018/03/31 東京新聞ほか掲載)

 国土について考えてみた。最近は特に北海道などで、外国人が土地を買うケースが増えているという。外国に住む人でも所有できる土地がはたして国土と呼べるのか……、そんな疑問からである。  昔の日本人はその土地ごとに神さまがいて […]

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猪目(いのめ)

(2018/02/28 東京新聞ほか掲載)

 以前、伊勢神宮にも「ダビデの星」があると聞いて驚いたのだが、当時はまだネット環境のない時代だった。ところが今や、グーグルで「伊勢神宮」「ダビデの星」と入れて検索すると、二万件ちかくもヒットする。なかにはそれを以て、日本 […]

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聖「冬のポンプ屋さん」

(2018/02/04 福島民報掲載)

 職業に貴賤(きせん)はないし、どの仕事もそれなりに大変なのはむろん承知している。海幸彦山幸彦の話を持ちだすまでもなく、どだい比べようがないのだし、かの福沢諭吉先生も他人の職業を羨(うらや)むことは世の中で最も下品なこと […]

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運慶展と六田(むだ)さん

(2018/01/31 東京新聞ほか掲載)

 すでに開催期間は終わってしまったが、上野の東京国立博物館で開かれていた運慶展は凄かった。内容もさることながらあの行列……。  一度は講演のため上京した折、少し早めに行ってチケットを買ったのだが、「60分待ち」の看板に怖 […]

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