エッセイ
天真を養う 第12回 修行の階梯
(2022/11/01 墨 2022年11・12月号(279号)(芸術新聞社)掲載)
「十牛図」 陶山雅純摸 原本:狩野探幽筆 江戸時代 東京国立博物館蔵 出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/) 「天真を養う」という言葉は不思議である。天真は以て生まれた命そのもの […]
特集「心ととのえる書」 そこに自由はあるんか?
(2022/11/01 墨 2022年11・12月号 279号(芸術新聞社)掲載)
「心ととのえる書」という特集名を見て、私はあらためて「心ととのえる」とはどういうことだったかと、考えてしまった。 私が属する臨済宗妙心寺派では、生活信条として次のような言葉を掲げている。「一日一度は静かに坐って、身( […]
特集 マインドフルネスとコンパッション 梯子と階段とエスカレーター
(2022/10/05 精神療法 Vol.48 No.5(金剛出版)掲載)
今回いただいたテーマは、「マインドフルネスに対する批判と今後の展開~禅の立場から」である。どうやら私がマインドフルネスを批判するものと決めてかかっているようだが、……どうしようか。 期待どおり批判するのが礼儀かもしれ […]
多田 フォン トゥヴィッケル 房代 著『楽の音(らくのね) ドイツの森と風のなかで』 解説 新たな風土に游ぶ
(2022/09/29 『楽の音(らくのね) ドイツの森と風のなかで』多田 フォン トゥヴィッケル 房代掲載)
解説をと依頼され、原稿が届いたのはお盆直前。しばらくは読めないだろうと諦めていたのだが、試しに頁を捲って読み始めてみると止められなくなり、途中で何度も客の応対をしながら原稿に戻るという調子だが、とうとうその日のうちに読 […]
日曜論壇 第106回 国葬儀?
(2022/09/16 福島民報掲載)
何年か前から都市部の一部の葬儀社が「火葬儀」というパッケージを売り出した。会社によっては「火葬式」と呼ぶところもある。何のことはない、これまで「直葬」と呼び、お通夜も葬儀も行なわずに火葬するだけのやり方を、尤(もっと) […]
天真を養う 第11回 撥草参玄
(2022/09/01 墨 2022年9・10月号(278号)(芸術新聞社)掲載)
「撥草」 沢庵宗彭 紙本墨書 一幅 32 x 57 ふくやま書道美術館蔵 「撥草」は「バチクサ」と読めばペンペン草のこと。実の形が三味線のバチ(撥)に似ているため「なずな」をそう呼ぶのだが、ここでは無論そうではなく、『 […]
『紫野』連載エッセイ 第1回 心の安全保障
(2022/07/01 『紫野』第61号(臨済宗大本山大徳寺)掲載)
和語はじつに面白い。古代の日本人は「心」のことを「うら」と呼んだらしく、「うらやむ」は「心(うら)病(や)む」で、元は主に愛情関係における嫉妬を意味していたらしい(白川静『字訓』など)。 自分もそうでありたいという願 […]
僊厓(せんがい)―洒脱と禅― 「渋柿」時代の仙厓義梵―洒脱以前の身心行脚―
(2022/07/25 季刊 禅文化 265号掲載)
はじめに 通常、仙厓義梵(せんがいぎぼん・一七五○~一八三七)といえば、書画に長けた洒脱(しゃだつ)な禅僧として知られる。もっと言えば、四十歳で博多聖福寺の住職になってからの、「博多の仙厓さん」としてである。 天保八 […]
雪村屋敷跡地
(2022/07/01 『雪村』第4号(雪村顕彰会)掲載)
雪村顕彰会の冨山章一さんから電話があり、「雪村屋敷跡地を見に来てほしい」と言われたのは二〇二一年も晩秋のことだったと思う。「風水的な環境を見てほしい」と仰るのだが、私にそんな専門的な判断は下せない。そうは思うものの、そ […]
日曜論壇 第105回 違いを笑う
(2022/07/17 福島民報掲載)
誰もが世界の平和について考える昨今だが、こんな時こそ日本人が作りだした秀逸なシンボルをご紹介したい。七福神である。 七福神とは、インドから大黒さま、弁天さま、毘沙門さまを招き、中国からは寿老人、福禄寿、布袋和尚が加わ […]
天真を養う 第10回 心おのずから凉し
(2022/07/01 墨 2022年7・8月号(277号)(芸術新聞社)掲載)
唐の文宗はある夏の日に学士たちと聯句を楽しみ、まず発句を詠んだ。「人皆な炎熱に苦しむも、我は愛す夏日の長きことを」。柳公権が続けた。「薫風南より来り、殿閣微凉を生ず」。他の学士も句を続けたのだが文宗はいたくこの句が気に […]
日曜論壇 第104回 北国の初夏と「宿怨」
(2022/05/15 福島民報掲載)
一九四一年四月に結ばれた「日ソ中立条約」は四年後の四月に一方的に破棄を通告され、ソ連は「連合国の参戦要請を受けた」と詐(いつわ)って八月八日に突如日本に宣戦布告した。その動きは一気呵成(かせい)で、翌九日の午前零時から […]