エッセイ


お風呂のような、般若心経

(2003/02/28 掲載)

 なんて不謹慎な題か、と思われるかもしれない。しかし断っておくけれど、私はお風呂がとても好きなのである。しかしだからといって「とても好きな般若心経」でいいかというと、それほど単純ではない。お風呂もいろんな入り方が可能であ […]

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恐るべき新興宗教の出現

(2003/02 明るいクヨクヨ教掲載)

 本来、私の仕事はあまり笑わずにすることになっている。別にそうと決めているわけでもないが、僧侶という仕事も小説を書く仕事も、自然な成り行きとして仕事中は笑わない。たまたま東海林さんの本の解説を書くという仕事が来たときも、 […]

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桜と祭

(2003/02/02 朝日新聞 TRAVEL「神々の冒険」掲載)

 誰の作かは知らないが、禅門では「昨日より 今日よりも今 桜かな」と詠う。桜を愛でる際のコツと考えてもいいが、じつは人生そのものの味わい方なのかもしれないと思う。目の前に咲く爛漫たる桜のように、私たちは今に咲いているので […]

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夢みる手

(2002年 季刊銀花 冬百三十二号掲載)

 掌の静脈はそれぞれ固有で他人とは違い、しかも一生変わらないのだと云う。この性質を利用して今年、マウス型の個人識別機が開発された。これからはパスワードではなく特定の手で操作しなければ動かないコンピューターが出現するだろう […]

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有為の奥山 美しい日本語

(2002/08/08 文藝春秋 9月臨時増刊号掲載)

 「美しい日本語」と云われても自分がそれを使っている自信は全くないから、ここでは最近の体験を紹介してみたい。  私の住む三春町では日本では初めて教育長の公募を一昨年行い、私もその選考委員を務めさせていただいた。五百人以上 […]

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行脚のための「三種の神器」

(2002/08/08 週刊文春 私のごひいき第77回掲載)

 日本神話の三種の神器は剣と勾玉と鏡だが、蒙古人の場合はこれがもう少し現実的になり、蒙古刀と食器とタバコになるらしい。  修行する僧侶には使用を許される十六の品目があり、それ以外を「無用の長物」と呼ぶが、行脚のときに必ず […]

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御前さまの御前に

(2002年 男はつらいよ大全掲載)

 寅さんの七回忌に合わせて作られる映画のパンフレット集だというのだから、やはり僧侶も何か書かなくてはなるまい。笠智衆さんも渥美清さんもすでに亡いが、あの二人の関係はじつに面白かった。私としては僧侶仲間である御前さまを憶い […]

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「黙識」あるいは言語道断の言語

(2002年 鈴木大拙全集 第三十三巻 月報掲載)

 鈴木大拙と呼び捨てにできるわけもないし、かといって大拙さんというほど通暁しているわけでもない。鈴木さんでは別人のようだから、ここでは大拙博士と呼ぶことにするが、そんなことで悩むほどに、大拙博士は遠くて近い存在である。  […]

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360度の虹 旅人の追憶

(2002/05 JAL機関誌 ウィンズ掲載)

 昔から空は人間にとって不思議な場所だった。  たとえば雲も、中国人は初め山腹から出てくると考え、その穴を岫(しゅう)と呼んだ。しかしそれも変だと、龍という生き物を創造した。龍の動いた跡が雲になると考えたのである。竜巻も […]

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氷雨 ~第100回芥川賞受賞者、李良枝氏没後10周年に寄せて~

(2002/05/18 山梨日日新聞掲載)

 その日、私はヤンジさんの故郷である富士吉田へ、ヤンジさんと一緒に行った。彼女にとっては家出して京都の旅館に住み込んだ高校時代以来の、たぶん十年ぶりくらいの帰郷だったはずである。  帰郷するのにどれほどの理由が要るかは人 […]

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空中の道路

(2002年 Spring号 JH郡山NEWS掲載)

 「交通」という言葉は、もともとコミュニケーションを指して云う言葉だった。心を通わせることである。また「空中の道路」などなかった時代、イギリスのアダム・スミスはお金(紙幣)のことを「空中の道路」と呼んだ。  現在は様々な […]

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「なすわざ」と「せぬひま」の祭

(2002年 NHK 趣味悠々「日本の伝統芸能」掲載)

 芸能のことにどうして坊主が口を挿むのかとご不審の向きもあるかもしれない。しかし元を辿れば同じ河原乞食や聖(ひじり)どうし、殊(こと)に禅宗は芸能をバックアップした歴史もある。何より村尚也さんは私の寺の本堂での催しで踊っ […]

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お経と小説

(2002年 THE ZEN 雪山号掲載)

 中陰の花が咲き、芥川賞を受賞してしまった。すると全国あちこちの和尚さんたちからたくさんの手紙が届いた。単に喜びと激励の手紙もあるが、多くは「じつは自分も永いこと小説を書いていて……」というもので、そうした潜在している僧 […]

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ウイスキーという作品

(2002/01 文藝春秋掲載)

 酒というと鹿児島では焼酎のことだが、酒といえばウイスキーを指した時代が私にはあった。二十代で小説を書き始め、しょっちゅう新宿界隈の飲み屋あたりでウイスキーをロックでやりながら、奇妙な波を描いて氷を溶かす琥珀色の液体を裸 […]

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中陰ガム

(2001/10 大法輪掲載)

 芥川賞の受賞決定後、友人からメイルが届いた。「中陰という言葉を現代日本に浮かび上がらせた宗久さんも大したもんだ。流行語大賞となり、たくさんの人が中陰ガムなんか食べるようになれば今の日本人の知的ユーモアも水準が高いと言え […]

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ガン治療の値段

(2001/05/19 読売新聞夕刊掲載)

 現在では三人に一人がガンで死ぬ。つまりガンは、最もありふれた死因になってしまった。 ガンになると恐らく誰でも様々な医薬品や健康食品を試みる。それは何にでも縋りたい人情の自然というものだろう。 四月に新潮社から刊行された […]

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